6. もう自分でも何を考えているのか、わからない。 そして結局、朝の六時に、義明はこうして一階のカフェからつながる中庭に出てきた。 まさかと思ったが、このカフェは五時から開いていた。 コーヒーのいい香りの中を抜け、庭に出ると、七卓ほどの白い丸テーブルのセットがあり、その一番奥に、あの見事な髪のエレンが座っていた。背後には寄せ植えされた細い竹の群れ。色合いは計算の上だろうか。 彼女は今、セルフサービスのモーニング・プレート(クロワッサンにジャム、カフェオレボウル)を置いたところだった。 義明を見たエレンは、ひらひらと右手を振った。 今朝は、シルバーグレイのパンツスーツにモーヴのシャツブラウス、白のサンダルと、ドレッシーだが活動的だ。 そしてリラの香り…。彼女も、もうこの香りを自分の定番にしているのだろう。記憶の中のあの老婦人のものとは少し違う――彼女のリラ。 「早くでゴメンね。今日、学会があって、さっさか出るの」 「あ、はい」 何か取ってきたら、と言われたが、何も喉を通らないような気がしたので、義明は小さく首を振ってから彼女の向かいに座った。 「学会…ですか」 「うん、宗教美術やってんの」 義明の驚き顔に、エレンはなに?と首をかしげながらクロワッサンをかじった。その動きでまたふわりと香りが動く。 「いえ、あの…通訳さんなのかと」 「ああ」 彼女は残っていた方のクロワッサンをカフェオレにくぐらせた。 「それで、しなかったのね。定番の質問」 今度は義明が、はて、という顔をする。 「『日本語、お上手ですね』」 「あ、ええ」 義明はうなずいた。 「普通に…日常の言葉として話していらっしゃるから、こちらに住んでおられるんだろうと。で、ここは京都だから…」 「なるほど、それで『通訳』ね」 ふう〜ん、と彼女が頬杖をつき、上目遣いで見つめるので、義明は困った。 「高耶はなんて?」 「え……」 「あたしのこと、何か言ってた?」 「…いえ」 なぜ、この人と自分がここにいるんだろう、と、ようやく義明は疑問の形をつかみ――自分ではなく、高耶がいるはずの席なのに、なぜ、と表情をくもらせた。 「そうなの? 夕べ、彼と話さなかったの?」 え…と義明は口を開いた。彼は貴女といたんでしょう、と胸の中に問いは浮かぶのだが、喉でつかえる。 「俺は…、姉、と一緒の部屋でしたから」 「あら?」 エレンはカフェオレボウルを持ち上げたところで、手を止めた。 「姉って、あのビーグルみたいな子? あの子とあなたが姉弟なの? あなたいくつ?」 ビーグル…綾子が?と、その例えを頭の中で検討しているうちに、次の問いがかぶさってきて、義明はあわてた。 「俺は高二で――十七才です」 彼女はふうん、とまたうなずき、カフェオレを一口すすった。そのままボウルを手の中に包む。 「あたしが高耶と出会ったのは、彼が十八になった夏なの」 義明は、ぴくりと動いた右手をあわてて押えた。 「あたしの母は日本人よ。ああ、わかるわ、ハーフにしちゃ、あたしコーカソイドっぽいもんね。母も民族的には1/4日本人。あとは英国とオーストリア。 で、父はスイス籍。ジュネーヴで生まれ育ったけど…まあ、ユーロ人ってとこかしら。やっぱり宗教美術をやってて、留学先の東京の大学で、母と出会ったの」 彼女のはきはきとした口調と、どこか学究的な空気のせいだろう。 相変わらず、自分の今いる場所に疑問は抱いていたものの、義明はエレンの語り口に素直に耳を傾けている。 「あたしは十二才まで、東京の世田谷で育って、そのあと父の故郷に移って、あっちの大学に入って父と同じ学問をやっていくことにしたの。 四年生の夏、院行きが決まってからフィールドワークで日光に行って。 で、光厳寺で高耶に出会ったの」 押えた右手が震えるのを、義明は必死で隠したが、エレンはじっとそれを見ていた。 不意に声が変わる。 トーンを落とし、ゆらりと艶めいた響きになる。 「ひとめ惚れだったわ。 どうしても欲しいと思ったの」 義明は息を詰めた。 「相性はよかったはずよ。 でも彼はあたしがほんとに欲しいものはくれないの。 …ベッドでは、とても素敵なのに」 駄目だ。 義明は立ち上がろうとした。 が、重ねていた手を上からぐっと押えられて、思わず相手をにらみつけた。 エレンは真剣な顔で、彼を見上げていた。 ややあって一言、 「ごめんね」 と、つぶやいた。 かすかに唇が笑う。 「わかるでしょ? あたし、もう今胸ん中ぐちゃぐちゃなの。 こんなに辛くて苦しい気持ちになるなんて、思ってなかったわ」 義明は、え…と声をもらした。 彼女は微笑んだまま、トレイを脇に押しやり、彼の手を包みこんだ。 「あたしはずっと日本にはいられないから、ずっと一緒に、ってわけにはいかなかった。研究も同じぐらい大切だったから。 連絡はいつもあたしから。 日本に着いたら、空港から電話。 会いたいの、って言うと、彼はできるだけ都合をつけてくれた。 他の人の影は感じなかったから、ほっとしてたけど…。 でも、いつも…そのあと、で。 彼は――いつも辛そうな顔してるのよ。 ひどく沈んでいて、声をかけることもできないの。 変わらない…ううん、どんどんひどくなっていったわ」 自分も辛いのだが、義明はエレンの真摯な声を振り切ってまで、立ち上がれなかった。 「ソルボンヌから話が来たのは、三年目の冬だった。 はっきりさせようと思ったわ。 『あたしと「恋愛」をはじめてみない? 本気で始めれば、距離もスパイスだわ』 彼は、はっきり首を振った。 ためらう素振りも見せなかった。 ひどいわよね」 エレンはくすっと笑い、すばやく目じりをぬぐった。 「『オレは、失くしたもののためだけにあるんだ』 どういう意味なのよ。 でも今までのどんな時より、重くて暗くて…綺麗な目だった」 それはわかるような気がする…と義明は、テーブルを見つめた。 傲慢だったり威圧的だったり。でも時々とても悲しそうな目でこちらを見るから…ふとあのまなざしをさがしてしまうんだ。 「ああ、そうか、って、あたしは思った。 彼は手に入らない。長くかかっちゃったなぁ、って。 もし、あたしが研究を捨てて、ずっと日本にいて、ずっとかきくどいたら、どうだろう。 でも、そこまでやっても叶わないんだな、ってね。 そしてあたしは学問も捨てられない。 どっちも欲しい、ってがんばったけど、ひとつは絶対叶わない。 それなら、もうひとつはもっと捨てられない。 そんな風にエンドマークがついたはずだった。 昨夜まではね」 溜息をついて、彼女は目を閉じた。 再び目を開いた時、今度は茶目っ気のある微笑みで義明を見つめた。 「あなたがエレベーターから降りてくるのを、あたし見てたのよ。 気づかなかった?」 きょとんとした少年の目に、エレンは明るい笑い声をたてた。 彼女のリラも、華やいで香る。 「びっくりしたわ! 十年前のひとめ惚れの稲光、再び、って感じだった。 こんな人が、また目の前に!!って、もう胸がどきどきしちゃって、あなたの目線を追ったら、また別の稲妻よ。 うっそー、なにこれ、こんなのありー!? 思い出になったと思ってた人が、いるじゃない。 しかも想像以上に素敵な大人の男になって、見たこともない笑顔で!! あとは身体が勝手に動いたの。 今、あたしは、ロマンス小説のヒロイン〜!! …のはずがね。 相手は、こっちなんて見もしないで押しのけて、きょろきょろして、それからまっさおになっちゃった。 連れらしい人が何か言ってるのに、聞いてもいないの。 それからエレベーターにすっとんでいって、ばしばしスイッチを叩いてから、ものすごい勢いで階段へ飛んでいっちゃったわ。 あたしはフロントに行って、 『ムッシュ・仰木はいらしてる?』 って気取って聞いたわ。 京都では、ここが常宿だから、フロントはすんなりと部屋のナンバーを教えてくれた。 エレベーターで七階に行って、どっちかしらとエレベーターフロアから首を出そうとしたら、あなたが右手の部屋から飛び出してくるのが見えて、びっくりして首をひっこめた。 真っ白い顔で周りを見て、奥の非常階段に走っていくのが見えたわ。そのあと高耶が飛び出してきたので、あたしはもう一度『再会の場面』をやろうとしてみた。 でももう全然ダメ。 高耶があんなに取り乱してちゃあね。 ショックだったわ。 わかってるつもりだったけど、あの三年は彼のなににもなっていなかったんだな、って思い知らされた」 エレンは淋しげに笑った。高耶のこわばった顔とかすれたつぶやきが彼女の脳裏に甦る。 (『二度と失えない』) 彼女はちょっと不思議そうに、義明を見つめ直す。 「…あなたの年齢とどうも噛み合わないんだけど…。 でもやっぱりあれはあなたのことね」 これはまったく少年にはわからない言葉だった。 「ごめんね」 彼女のこの言葉は二度目だが、義明にはこれもよくわからない。 なぜ謝られるのだろう。 「あなたがこんなに素直に時間通りにやってきて、あたしの『過去の清算』につきあってくれるなんて思ってなかったの。 こんなに爽快な気分にしてくれるともね。 ずいぶん『ヤな女』も、さらけ出しちゃったけどさ」 エレンはそっと義明の手を解放したが、急に女子高生のような――ガハハ、という擬音のつきそうな笑顔になった。 「でもちょっと…やっぱり残念だなぁ」 また何を?という義明の表情に、にやっと笑う。 「せっかく二度も極上の男になる人にめぐり会えたのに、どっちもヒバイヒン」 ひばい…。義明の脳内漢字変換が一瞬遅れた。んん、と首をかしげる。 「…人間に『非売品』ってあるんですか?」 エレン・テレーズは、くるりと瞳を動かして笑いだした。躍りはずむ彼女の香り、彼女のリラ。 「あるわよぅ。こっちの努力にも関わらず、ワガモノにできないんだから」 しかし、それって…商取引じゃないんだから、とますます眉を寄せはじめた少年を、彼女は楽しそうに見つめて――それから聞いた。 「ね、名前教えてよ」 「え、あ、橘義明といいます」 そう、と彼女は優しく笑った。 今までで一番綺麗だな、と義明は思い――そして高耶も、この一番暖かい微笑みを知っているんだ、と気づいて。 また心の中で、ぱちんと何かが割れたような気持ちになった。 「さあ、じゃ、行かなきゃ。 つきあってくれてありがとう、橘君」 「あ…はい…」 カフェの入り口で、義明は彼女を見送った。 美しいエレン・テレーズ。リラの香りのひと。 義明にとっては二人目の。 カフェの従業員、フロント、ドアマン。 誰もが、彼女の笑顔を贈り物のように受け取る。 ――彼、も。 彼は、彼女の望むものはくれなかったと、エレンは言ったけど。 それでも、あの笑顔は受け取ったのだ。 義明はまた、ひたひたと満ちてくる苦いものに小さく首を振った。 会いたい、と思った。 でも今一番会いたくないのも、彼だった。 7. 痛む頭を押えて、時計に目をやると九時だった。 一服盛りやがったな、とこれもこめかみを押えている千秋に噛みついたが、相手はちげーよ、と唸って、眼鏡を捜している。 「途中で日本酒にしただけだ。お前、体質に合わないって言ってんなら、替えた時に気づけよ」 高耶はとにかく口をすすぎに走り、ついでに二回顔を洗うと、少しは人間に戻ったような気分になった。 シャツだけは替え、部屋を飛びだすと、向かいのドアから綾子が出てくるところだった。 肩には黒いスポーツバッグ。 義明のものだ。 「何してる」 地を這うようなトーンの彼の声にも、綾子は面倒くさそうな一瞥を投げただけだった。 「着払いで送っといて、って頼まれたの」 彼女はドアを閉めた。 「その気配りがいいから、『うちの会社』持ちで送ったげちゃう」 歩き出そうとした彼女の肩のバッグを、高耶がつかむ。 「…どこに行ったんだ」 「あんたの近過去について学びに」 綾子は横目で高耶を見る。 「…のために、『赤毛の美人女教師』――うわーお、なんのタイトルかしら――と早朝の逢引きに。そのまま素敵な紀州犬少年は、喰われてしまいましたとさ」 高耶の形相に溜息をつく。 「ウソに決まってんじゃん。 前半はほんとだけど」 今度は精根尽き果てました、という高耶の表情に、もう一度溜息をつく。 「でもあり得なくはないよね。 かつて、あんたもそうやって落とされたんだもんね」 「やめてくれ」 覇気のない声だった。 綾子はちらりと高耶を見たが、またエレベーターの方へ目をやる。 「だってあの子、このことでは口が裂けても、あんたを責めるようなことは言わないでしょ。 だから代わりに言ってる」 綾子は、一度大きく息を吸った。 「何もかも一人で心に押しこめて、家に帰っちゃった。 あんたと違って、甘えさせてくれる人もいないのにね。 あんたを責める権利なんて持ってない、ってあの子は思ってる。 十分、迷惑をかけられてるのに。 あんたとエレンの痴話ゲンカに使われて」 殺気さえ帯びた高耶の目に、うんざりしたような顔で応じる。 「そうでしょ? あんたはあの子の保護者に納まって、年上の指導者として、あの子を囲いこむつもりだった。 あの子に何の権利も与えないで。 本当に『直江』にそんなことができると思ってたの? 今度こそ、おとなしく従順な飼い犬に仕立てたかったの??」 みし、と綾子の周囲の空気がきしんだ。辛くないわけではなかったが、彼女は耐えてやりすごした。 「苦しい時に、すがらせてやることもできない。 そんなふがいない保護者なんて要らないね」 高耶は綾子からバッグをもぎとった。 綾子は腕を組んで、彼をにらみ上げた。 「駅へ行っても無駄。電話あったの、二時間も前なんだから」 8. そのとおりだった。 もしかしたらまだ駅のどこかにいるかもしれない、という望みには無理がありすぎた。 このにぎやかで巨大な駅のどこにも、彼を静かに包んでくれるような場所はない。 彼はまっすぐに故郷に戻ったのだろう。 高耶は車に引き返した。 松本まで330kmほど。 およそ五時間のドライブになる。 行きには、義明と一緒だった。 電車で行くから、あなたはそのまま東名、名神と行けばいいでしょう、と言うのを、無理やり迎えに行ったのだ。 無駄なことをするんですね、と皮肉っぽく言う。 ナビをテレビ画面にすると怒る。 いっそもっと怒らせてやれ、と携帯にまで応答したら、掌サイズの保冷剤をシャツの胸ポケットにつっこまれた。 こんなもん、なんで持ってる、と怒鳴ったら、綾子に頼まれた松本のケーキ屋のロールケーキに付いてた、と涼しい顔。 へぇー、綾子のパシリはすんのか、と笑ってやったら、留守番の弟にも同じ物を買っといてやればって言ってくれたから、と真顔で答えた。 …ちょっと口惜しかった。 綾子が彼の扱いを心得ているのと、彼女らしい気遣いを示していることを、彼がわかっていることが。 口惜しいから、くだらない話をいっぱいして、山ほど呆れられて――――。 たまには一緒に笑った。 楽しかった。 『おとなしく従順な飼い犬に――』 違う、そんなことを考えていたんじゃない。 ただもっと――優しい穏やかな…そんな形ができたならと思った。 思っていたが…。 『――お大事が怪我をするぞ』 高坂の嘲りの声が、自分から何を引き出したか。 (貴様に渡すよりはいい) 心の中だけの、掛け値なしの本音。 そう、何も変わっていなかったのだ。 肩に力を入れすぎていたことに気づいて、高耶はハンドルの上の手をゆるめた。 一人の今、この道のりは長かった。 高耶の車が松本に着いた時、夏の長い陽ももう西へと傾きはじめようとしていた。 義明は自宅にはいなかった。 第二の家のような図書館にも彼の姿はなかった。 (どこに…) 高耶の胸に、昨夜の不安が甦る。 ホテルを出ていった義明。小さな子供じゃないんだぞ、と何度自分に言い聞かせても、この彼にとっては見知らぬ街のどこかに呑みこまれてしまったら、という不安は消えなかった。焦りで掌が冷たい汗をかく。 その時、思い出した。 「ああ、川だ」 と、彼が笑ったのを。 京都に入り、鴨川の側を通った時だった。 彼の家は女鳥羽川の近くだ。親しい音と親しい水の気配なのだろう。だとしたら。 高耶は、ばん、とハンドルを叩いた。 「だとしたら! 今日もそうか!」 昨夜は鴨川だったが、今日は。 もう一度、信州大学の近く、閑静なたたずまいの高級住宅地の中にある彼の家に戻ってきた高耶は、そのまま住宅地の端、川へと視界が広がるあたりまで、静かに車を進めて止めた。 女鳥羽川は標高の高くなるこのあたりの方が、川幅が広い。 橘義明にとって、一番親しい川。 傾きかけた陽が、川面にちりぢりに砕けて降りそそぎ――流れていく。絶えることなく、遙かを目指して。 土手をくだり、はしゃぐように光る水面を見つめながら、義明はぼんやりと川原にたたずんでいた。 ふと気配を感じて振り返ると、上の道路から高耶が見おろしていた。 (少しは彼のことを知っているつもりだった…) でもそんなのは思い上がりだった、と義明は思う。 何も知らない、何も。 本当に自分の中に、彼の捜していた『直江』がいるのか? その『直江』は…彼の後見人、彼の臣下。多分、戦友というものなのだろう男。 (どんな人だったのか…) 知りたいけど、でも。 彼の望む直江が『戻ってきたら』。 (…「橘義明」は、どうなってしまうのだろう?) 高耶は黙ったまま、肩のバッグを示した。 小さなためらいはあったが、義明はゆっくり土手を上がり、彼から少し距離を置いて 向き合った。 その空間の取り方に、高耶はちらりと眉をひそめたが、あえてそれを詰めることはせずに、腕をいっぱいに伸ばしてバッグを渡した。 「ありがとうございます」 義明は静かに言うと、バッグを肩にかけて頭を下げた。 そのまま川に背を向け、歩きだす彼に、高耶はやっと、 「送るか?」 と声をかけた。 少年は一瞬足を止めたが、背を向けたまま、 「近いですから」 と、短く答えた。 …このまま別れてしまうのか、と高耶は焦れたが、何を言えばいいのだろう。 かけるべき言葉が見つからない。 (振り向いてくれ) いつのまにか必死でそう願っている自分に気づいて、高耶は苦く笑った。 義明の姿が道の向こうへ消えるまで、ずっと見つめ、見送ってから、川に目を向ける。 彼の愛する川、彼に一番近い風景。 (『オレの傍に来る』) そう言い切った昨夜が、ずいぶん昔のことのように思えた。 了('07.10・20〜26) |