たった二ヶ月で、風景は一変していた。 山も、田んぼも、そして、庭も。 「すっげー。……ここまで茂るもんなんだ……」 子どもの背丈ほどに生い茂った雑草を眺め、呆然と高耶が呟く。 少々荒れた感はあったが五月にはまだ普通の庭と無人の家屋だった。 それが盛夏を迎えた今は我が物顔に伸びた草たちに占拠され、まるで狐狸の棲み処といった様相を呈している。 「予定変更。まずはコレをなんとかしよ?このまんまじゃあんまりだ。おまえのお爺さんに祟られそうな気がする」 わさわさ揺れる一年草の草叢に侵食されかかった玄関前を指差しながら提案に、 「……同感です」 傍らの男ががっくりと項垂れたようすで返事を返す。 「あなたにはまた迷惑を掛けてしまいますね。今回は調べ物に専念していただくつもりだったのに……」 「そっちはひとりになってからじっくりやるよ。まずは手のあるうちにカラダを張った労働だ。……もちろんおまえのこともアテにしてるから、よろしくな」 身の置き所がないような風情での詫び言は、そう、あっさりといなされた。 ぽんっと軽く肩を叩き、 覗き込むように見上げてくるきらきらした瞳。笑いを含んだ口角。 ああこの人はこんな状況さえも楽しむことが出来るのだと、少しだけ救われた思いがした。 春の訪問は処分前提の家財の整理のためだった。 そこで高耶と出逢った。 彼と過ごした十日の間に、大叔父の遺したこの家を処分する気持ちは綺麗さっぱり失せてしまった。 が、いくら自分でそう思い極めたところで、根本的な問題は残る。 維持管理に人の手は欠かせない。年に数度、数日程度の滞在だけではとても追いつかないことを、この夏草たちが証明しているようだった。 「ま、こんなもんかな」 「こんなもんでしょう」 縁側に腰を下ろし汗を拭い水分を補給しながら庭を眺め、二人は仕事の成果を確かめる。 鎌で刈るのだったら大変な重労働だったろう。 けれど物置の隅に仕舞いこまれていた草刈機と燃料を高耶が見つけだして、作業効率は格段にあがった。 手慣れた様子で機械を操る直江に高耶はすっかり感心して、あれこれコツを訊いては自分で試し、たちまち操作を覚えてしまった。 そうして二人がかりでせっせと働いて、一時間も経つころには、庭はだいぶすっきりしてきた。 「直江が草刈機使えるの、ちょっと意外だった。あれって普通のうちにはないだろ?」 二本目のペットボトルを開けながら、不思議そうに高耶が問う。それが少しこそばゆい。 「動かせる人手は在るにこしたことはないと、昔、親父に仕込まれたんです。 高耶さんこそ覚えが早くて吃驚しました。さすがですね」 お世辞でなく出た言葉に今度は彼の方がくすぐったそうな顔をする。そのまま手にしていたボトルの中身を飲み干すと、 「さ、仕事仕事っ。うちん中をささっと片してこれから買出しもしなきゃだろ?頑張ろうな!」 照れ隠しみたいに早口で、そう、気合を入れられた。 |