先年、月花草さま宅に、拙作「Precious 誕生日のおくりもの」をもらっていただきました。
以下は、その続編になります。
本当は「僕が遊んであげる」の台詞を書きたいゆえのお話だったはずなのですが。
・・・・・・どんどんどんどん膨らんじゃって、差し上げものだけでは収まらず(苦笑)
結局自分ちで続けることとあいなりました。
月花草さん、こちらに続けさせていただくこと、ご了解くださってどうもありがとうございました。
Precious ―きよみず 1―
将来に対する、漠然とした不安がなかったわけではない。 いつまでもこのままでいるわけにはいかない。 いずれ高耶は成長して青年になり独り立ちし、自分や仰木の手からも離れていくのだろう。 それでも。 そんな心配もまだ数年は無用のもの。今はただ彼と暮らす日々を大切に過ごしていきたかった。 彼と出逢った七年前、彼といるだけで心が暖まったように。 彼を守り慈しみ、そして彼から無二の愛情を得られたら。それだけで自分は満たされるのだと、そう信じていた。 それが。 まったくの偽善だったと、今度のことで思い知らされた。 傷ついた高耶への憐憫。 傷つけた相手への憤怒。 彼を守りきれなかったことへの自責。 そんな保護者なら当然の情とは別に、奥底から湧き上がって身の裡にわだかまる憤懣。 きれいごとでは収まらないどろどろとした劣情。 誰かに奪われるくらいならいっそこの手で彼をと、そこまで想い極める自分がいることを、はじめて直江は自覚した。 もう何年も前から、自分は高耶に恋していたのだと。 これでは高耶を襲った相手と変らない。 いや保護者面して高耶の懐深く食い込んでいるだけ、もっと始末が悪いかもしれない。 自分を信じて懐いてくれた彼をずっと謀っていたことになるのだから。 もちろん、まだ小さかった彼を欲望の対象としてみたことはないと、神かけて誓えるけれど。 これからもそう在れるかといえば確証はない。 今はまだ自制できる。なにげない態度を取り繕うことも出来るだろう。 が、一度自分の本心に気づいてしまった以上、日々の暮らしの中のさりげない情景、 例えば風呂上りの濡れた髪や、部屋着からのぞく彼の素足、弾みで触れ合う指先が、危うい甘美さを孕んだものになることは、容易に想像がついた。 何も知らない高耶の、無意識の誘惑にどこまで自分は耐えられるだろうか。 高耶を傷つけたくはない。けれど傷つけてしまうかもしれない。 そんな相克が、次第に直江を追い詰めていく。 自身の葛藤で手一杯の直江には覇気をなくした高耶のその本当の心中を慮る余裕があるはずもなく。 互いに遠慮しながらの息詰まるような日々をやり過ごして、冬休みがやってきた。 |