季節は風薫る五月。 一頃よりもだいぶ夜明けは早まって、気がつけばカーテン越しの光でもずいぶんと室内が明るくなった。 時刻は六時五分前。 セットしてあるアラームが鳴るより先に目覚めてしまう朝が最近続いている。 そんな自分に苦笑を洩らしながらさらに頭を巡らせば、その原因が今朝もちょこんと布団の傍に座っていた。 小首を傾げ、きらきらと期待に満ちた眼差しで、無言のうちに起きろと『圧』を発する『彼』が。 「…おはよ。バーナム」 「ワオンっ!」 待ち構えていたような元気な返事に高耶が破顔した。 「今日もいい天気だな。散歩、行くか」 「ゥオン、オンっ!」 言わずもがな、高らかに賛同する声。 「……っしゃっ!」 つられるように気合を入れて、高耶も布団をはねのける。 今日も新しい一日が始まるのだ。 手早く着替え、顔を洗い、トイレを済ませる頃には、それまで足元に纏わり衝いていたはずの『彼』は、 ちゃっかり自分のハーネスを咥え、ドアの前で待ち構えていて。 「はいはい、相変わらずのお利口さんだよ、おまえは」 高耶は手早くハーネスとリードとを繋ぎ、七つ道具の入ったトートを下げて、日課になった朝の散歩に向かった。 |