ひとたび熱狂が去ってしまえば、目に映るのは無惨ともいえる光景だった。 身体を清めてやりながら、意識のない高耶の様子に改めて自分の罪深さを思い知る。 糸の切れた人形のように横たわる精液にまみれた身体。 泣き濡れた顔。 縦横に走る赤い擦過痕。散らされた刻印。 床の上で無理な姿勢を強いたための、今はまだ目立たずにいる打撲の兆し。 手首に残る戒めていた指の跡。 明日になれば、痛まないところなどないに違いない。 そして傷つけてしまった内部。二三日の間はきっと身じろぎすらままならない。 度重なる執拗な摩擦で腫れあがり血の滲み出た粘膜に、丁寧に薬を塗りこむ。 深い眠りにありながらも、苦しそうに眉を顰める高耶が痛々しく、そして愛しかった。 目覚めた時の彼は怒り狂うだろうか。羞恥のために口も利かないだろうか。 それでも。 やがて高耶は許すだろう。 反省の色もあらわに甲斐甲斐しく世話をする自分に、しょうがねえなあと、ため息をついて。てれたように微笑んで。 次はないからと、釘を刺すのも忘れずに。 そしてこの夜の行き過ぎた行為はなかったことになる。 でも、高耶は知らない。 それこそが自分の希だったのだと。 あの白い花を見るたびに、淡い香りを嗅ぐたびに、高耶は思い起こすだろう。この夜の交わりを。 甦る羞恥に耳まで赤くして、きっとうろたえたように眼を逸らす。考える余裕がなくなる。 そうなるように、自分が仕向けた。 高耶の心に棲んでいたあのしあわせな記憶は永久に封じ込めた。 より強烈な経験で強引に上書きした。盗まれたことを高耶本人にも悟られぬよう周到に。 「ひどい男でしょう?……自分のためなら、平気であなたのものまで掠め取る。自分の腕だけに囲いたがる。でも……愛しているんです。あなたから奪ったものは、それ以上にして償うから……。どうか私を憐れんで、許してください…」 髪の毛に触れながら、無心に眠る高耶に祈る。 直江の顔には、ちょうど一月前、あの親子を眺めていた高耶と同じ表情が浮んでいた。 |