それはまるで彼の地で眺めた火龍果の花のような。 その宵の高耶は、異国の好事家が丹精込めて育て上げた一夜限りの大輪の華が、妖艶な香りを振り撒きながら純白の花弁を反らせていく優美な姿によく似ていた。 尿道からの刺激はその部位が繊細であるだけ得られる悦楽は深くて鋭い。 一度でも味わってしまったら容易には忘れられない麻薬のように。 たとえ初めは怯えて泣いたとしても、すでに快感に馴れている彼の身体は無意識にでもその際どさを求めずにはいられないはず。 そして獣の姿勢で直江を受け入れた高耶は、いつになく素直に快楽に溺れていった。 「ふッ…はっ…はぁ………ああッ!」 鷲掴みに腰骨を捉えられ思うさま揺すられて、高耶がせわしない喘ぎを零す。 「…やぁ………なお…もっとッ!……」 「こう?」 切羽詰って強請る声に、知り抜いた快感点を抉ってやれば、 「あああぁっ!」 とたんにしなう背中。溢れる悲鳴と白い精液。 がっくりと落ちた肩が荒い呼吸に上下するたび 艶めかしくうねる背中の陰影を、うっとりと眺めながら、達したはずのオスをまさぐる。 花冠で飾られたそれは、まだ射精の途中であるかのようにぴくぴく蠢いていた。 挿し込まれた異物に堰き止められて一気に欲望を開放できないでいるのだ。 長く緩慢な絶頂も、感度の上がりきった今の彼にはもどかしくしかないだろうと、 先端にあてがった指先にくっと力を込めた。 「やぁぁぁっ!」 弓なりに背筋をそらせ喉を反らせて、撃たれた獣のように高耶は啼いた。 彼の体内から溢れ出て指を濡らす白濁がとろりとその嵩を増した気がした。 「……あ……あぁ………」 衝撃をやり過ごそうとしているのか、それともまだ奈落のような深い刺激が怖いのか。 ぶるぶる肩口を振るわせながらなかなか硬直の解けないでいる高耶の真意はどちらだろうと見極めるため、 直江もじっと息を潜める。 繋がったまましばらくそうして動きを止めて、先に痺れを切らしたのは高耶の方だった。 「なお……」 彼の肩越し、潤んだ黒曜が振り返る。 「そこ、もっと触って……」 情欲に掠れた声で。自分を緩く包む男の手を物欲しげに見つめながら。 「もっと?でもいいの?さっきはあんなに嫌がっていたでしょう?」 ためらうそぶりで言葉を濁すと、高耶は、焦れたように顔を歪めた。 「んっ……いいから、早くっ。おねがい……」 動かない男をなんとかその気にさせようと、自ら腰を揺らして催促する。 そんなふうに誘われて、正気でいられるわけがない。 「じゃあ、さっきの続きをしましょうね…」 身体を起こし己のものを埋め込んだまま高耶を膝に抱え上げて、直江は再びまぐわう姿を鏡に曝した。 蜜に塗れた細茎を、捻りながらゆっくりと引き出して。また同じように回転させつつ埋め込んで。 時々は思い出したように花首をぐいっと押して奥の奥を突いてやる。 そのたび、高耶は堪らないとばかりに身を捩る。高く低く、カナリアの声で啼きながら。妖しく腰をくねらせて。 「そんなにこの遊びが気に入った?」 時間をかけた戯れに、高耶はとろんと視線を流し熱い吐息を洩らすばかり。与えられる刺激を貪るのに夢中で、揶揄も、鏡が映す己が痴態も気にならぬようだった。 「なお……後ろも……」 自分が揺するだけではイイ処に当たらない、おまえも動けとばかりに、熟れた瞳で強請ってくるから。 苦笑しながら、赤く染まった耳朶を食んだ。 「前と後ろ、いっぺんにはムリですよ。玩具を動かせばまた話は別ですが。…それは次の機会にして。そろそろコレを抜いてもいい? 私もじっくりあなたの内部を愉しみたい」 そう、肉襞の蠕動ときつい締めつけ、これでもかと見せつけられる扇情的な表情に煽られっぱなしで、直江の忍耐も限界だったのだ。 返事も待たず、散々弄った花を止めとばかりぐりぐりと押し込んで一気に引き抜く。ひょっとしたらその乱暴な仕草にぴりりと痛みが走ったかもしれない。 が、今の彼なら痛みさえすぐに快感にすり替えるだろう。 瞬間上がった悲痛な声には頓着せずに直江は高耶を押し倒し、すぐに激しい抜き差しを開始した。 獣じみた夜が更ける。 彼を突き上げて精を注ぎ彼を逐情させるたび、剥がれ落ちるのはいったいどちらの理性なのか。 荒い息遣いと喘ぎ声だけが閨に満ちる。 姿見が映し出すのは、寝台でもつれて蠢くふたつの影。 処かまわず情痕を刻まれて精液に濡れ光る淫らな肢体が、まだ足りないとばかりに男の腰に絡みつく。 もっと、と。 半開きの唇からちろりと赤い舌を閃かせ妖艶な娼婦そのものの貌で。 直江が咆哮を上げて組み敷く高耶の下には、用済みになった秋桜の花が、赤黒い血の染みのような姿で拉げていた。 |