行儀よく揃えられた膝小僧に手を掛けて彼の脚をすくい上げる。腰まで浮かせてソファに乗り上げ、
片膝を背もたれに掛け残る片脚を大きく開いて。
そうやって全てを眼下に曝す格好を強いて、酒に濡れた内腿に舌を這わせた。 ちろちろと舐めあげて、やがて辿りついた奥処もしっとり濡れている。 「此処はもっともっと濡らさないとね……」 猛った彼の性器越し、目線を交わらせながら、そう断じた。 恥ずかしい格好をさせられて、恥ずかしい処を見られて、恥ずかしいことを言われて。真っ赤になった高耶は今にも泣き出しそうに瞳を潤ませている。 でも彼の望むものはこの行為の先にしかないから、可哀想に拒否する術もない。 懸命に肩を震わせ半開きの唇で呼吸をするのが、いっそ蠱惑的だった。 「この酒、俺はたくさん頂いたけれど、高耶さんはまだ最初の一口だけでしょう?今度はこっちのお口に含ませてあげましょうね」 「!っ」 信じ難いと見開く瞳。誰より愛しい人にこんな貌をさせて。それが震えがくるほど嬉しいなんてどうかしていると自分でも思う。 けれど止まらない。 窄まりを撫で、ほんの少し指で開いて鶴首を傾けた。 「やだッ!やめてっ、直江ッ!」 悲鳴じみた制止は、天音の奏上。止まるわけがない。 「大丈夫。少し湿らすだけですよ。……溢れた分はちゃんと舐め取ってあげるから心配しないで」 こんなときでなければ見惚れるほどの美しい笑みを浮かべ、思うとおりにした。 くちゅ…。 水音とともに襞が綻ぶ。 少しだけ指で穿っては流し込む酒。すぐに溢れるそれを拭っては舌先を伸ばし余韻に慄くそこを擽った。 少しずつ指は深みを目指し、それにつれて粘膜から取り込まれる酒精は、中から高耶を蕩かしていく。 「……ふっ……あっ、…ああっ…」 熱い息とともに零れる声。 薔薇色に染まる肢体。芒洋と彷徨う視線。 元々、彼は、酒に強い性質ではないのだ。 「……気持ちいい?」 問いかければ、こくこくと素直に頷く様がまた可愛らしくて。 「じゃあ、もっとあげましょうね」 そうして指を二本に増やした。 こじ開けて。注ぎ込んで。 無理やり作られた歪な洞の奥に、面白いように酒が吸い込まれていく。 「やあああっ!」 体内を逆流する感覚に高耶が啼いた。彼を苦しませるのは本意ではないからすぐに指で掻き出して、酒と蜜の混じったそれを、音を立てて思い切り啜り上げた。 「あっ、あっ、あっ……ッ」 指と酒精に弄られ充血した粘膜に、それは止めの刺激だったのだろう。 せぐりあげる悲鳴とともに、彼は絶頂を迎え白いものを吐き出した。 下腹を汚し。胸を汚し。生温かい体液がゆっくり伝い落ちるのを凝と見つめた。 放心しきった虚ろな表情が、例えようもなく美しかった。 抱え広げていた脚を下ろし弛緩した身体を楽なように整える。 そのまま静かに覆い被さって、今度は彼の放ったものを舐め取った。 「…ふ……はあぁ……」 されるままだった彼の唇から、再び艶っぽい吐息が零れ始める。 「なおえ……」 ふいに明瞭な声音で呼びかけられて、思わず彼を振り仰いだ。 さっきまで焦点のあっていなかった瞳が今は光を取り戻している。 「……カラダ…熱くてたまんない……助けて……」 力の入らない指先を伸ばして、それでも抱き縋ろうと必死に肘で身体を支えて。 「直江の……早く……」 「……!」 バランスを失って転げそうに傾ぐ身体を抱きしめた。 散々苛めてしまった彼の後孔は、もうぼってりと赤く腫上がっていて、無理に繋がれば血が流れそうだったけれど。 それでもこんなふうに求められれば応えないではいられない。 「……いきますよ」 膝裏をすくい彼の重みを支えながら、膝の上、後ろ抱きに貫いた。 「あああああっ!」 高耶はもう声を殺さない。 そうしていいと教えたから。 「ああっ!……いいっ、いいっ!そこぉ……」 じりじりと押し入ってすべてを収め、嬌声に促されるまま小刻みに揺すりたてた。 酒精に侵された彼の中は、いつにもまして熱くて柔らかくて。 前を扱き乳首を捏ねて快感を煽れば、咥えこんだものをきゅうきゅうに締めつけてくる、その刺激だけで達してしまえそうだった。 「本当に……あなたはなんて……」 仰け反るうなじに、歯型を立てて口づける。幾度も幾度も、荒ぶる衝動を解れとばかりに。 「…はっ……ああっ!」 不自由な姿勢で顔をひねって、高耶がキスをせがむ。その口唇をも存分に吸い上げた。 「んん――――っ!」 快感点を同時に責められ、一気に高耶が上りつめる。 「―――っ!」 声にならない悲鳴を上げて、高耶は二度目の精を放った。 ひくひくと痙攣しながら絡みついてくる悦楽に、直江もまた練り上げた精を高耶の中に注ぎこむ。 絶え間ない淫猥な水音とソファの軋み、甲高い嬌声に満々ちていた空間が、一瞬の静寂を取り戻す。 めくるめく高揚と失墜の後には、落花狼藉の様子を呈した部屋の惨状。 倒れた酒器、脱ぎ散らかされた衣、あちこちに飛び散る飛沫。そして己の獣じみた荒い息遣い。 それでも、夢中で貪り喰らった可憐な花は確かに腕の中に在る。 逐情とともに気を飛ばした高耶の身体からは酒の芳香ともに互いの匂いも妖しく立ち上っていて――― 寝顔に刻まれた微かな微笑とともに、宴の余韻をいつまでも漂わせていた。 |