彼に似合う白

―4.5―




白く仰け反る喉元。かたちのいいおとがい
打ち振るたびに乱れる黒髪。浮き出る鎖骨。
半ば開かれた唇から間断なく零れ、時に艶を帯びる悲鳴こえ
意味を為さずに消えるうわごと。
それでも、何処をどうしてほしいのか、カラダは如実に反応を返すから。
狭い肉襞を往還しながら導かれるように逐情する。絡みつく肉襞の刺激にこらえようもなく、まるで搾り取られるように。

罠に嵌まり蜜壺に溺れて溶かされる羽虫のようだと、思う。
それで構わないと思う。
己の放つ体液の何万という微小な生命の欠片と引き換えに彼の命が贖えるなら。


そうして何度目かの精を放った時、ふるりと高耶が大きく震えた。
虚ろだった瞳を見開き、嗄れて言葉にならない声でしきりに訴えかけてくる。

「?」

ほどなく直江も気がついた。
とろりと。
繋がった部分から泡立つものが溢れて肌のあわいを伝っているのを。
少しでも彼が取り込みやすいよう最奥めがけて注いだものが、 動くたびにまつわりついて滲みだしてくる。

「…気になる?」

濡れた瞳が瞬いた。
彼にとっては聖水に等しいそれを一滴たりとも無駄にしたくはないのだと、子どものような一途さで見つめてくるから。
愛しすぎて狂いそうになりながらも、意地悪く問うた。
「飲みたい?上の口にも?」
こくりと頷くのに、更に告げた。
「じゃあ、四つん這いになって……。全部掻き出してあなたにあげる」


「……んんっ……」

獣の姿勢を取らされ枕に顔を埋めて高耶が呻く。先ほどよりはよほど細い、けれど傍若無人に内部で蠢く二本の指に翻弄されて。
擦られつづけて敏感になった粘膜を更にこそげるように探って掻きだす。
埋めた指を引き抜くたび、生き物のように収縮を繰り返す窄まりからはとぷとぷと二Hの液が零れ出た。
すかさず脚の付け根にあてがった掌で受け止める。窪みいっぱいにまで溜まったそれを、今度は彼の口元へと運んでやった。
首を擡げ喉を鳴らしてそれを呑み干した高耶は、惜しむようにその掌を舐め、指の股にまで舌を絡めてきた。
このうえなく淫靡な、痛ましいような仕種で。

これが自分の姿、本性だと、何も隠さずに高耶の瞳は語るから、その潔さに、直江は恥じいる他なくなる。
試すような真似をしてしまった、その許しを乞うようにくちづけた。

己の味がするかと覚悟した高耶の口腔にすでに青い匂いはなく、微かな花の香りがした。
この人は本当に人間ひとではないのだと、今更ながらに思い知る。

そんな彼と心を通じ合わせ、必要とされていることに痺れるような陶酔を感じて、直江は高耶を抱きかかえるようにして胸を合わせ、宝物を扱うように膝の上に乗せた。
「もう一回……いいですか?もう一度こちらに……」
高耶が嬉しそうに微笑んで、直江の首に腕を投げかけてきた。
浮いた腰を支えて慎重に屹立の上に落す。

囁きかける睦言とともに、再び流れ出す蜜のような時間。
ねっとりと甘く秘めやかな水音は途切れることなく続き、もつれあう影もまた離れることはなかった。



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ホネ、拾ってみました。

……………。

ここしばらく続いた体調不良は直江の祟りのような気がしたので。




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