「夏宵悠遠」の流れを汲む番外、百合野幻想「可憐」編(笑)
小管さまの噛み付き高耶さんをイメージしつつ、なんとか1と翌朝番外を続けたいな。と。
その頑張った結果がなぜ、「離れ」格納になるのでしょう???不思議です。
なにはともあれ、お楽しみくだされたらさいわいです。
小菅さま、一枚で二度オイシイ「ニンジン」をどうもありがとうございました<(_ _)>
夏宵悠遠 番外 百合野幻想 2.5
一度箍がはずれてしまえば、もう留めようなどなかった。 これほど飢えていたのだと。 うわべだけの優しさなど捨て去って、貪り尽くす勢いで彼の口腔を蹂躙した。 負けじと応酬していた高耶だが、やがて体格差に負けじりじりと圧倒されて、呼吸が継げなくなったのだろう。 執拗なくちづけから逃れようとするように首をひねり、両手を突っ張って男を押し退けようとする。 その拒むような仕種がますます直江を煽り立てた。 苦もなく高耶の両手を纏め上げ、力任せに上体ごとシーツに押し付けようとしたその瞬間 「!」 高耶は、猫のようにすばやく身体をひねると、手首を戒めている直江の甲に思い切り歯を立てた。 思わぬ反撃に動きの止まった男を、警戒の色を残しながら高耶が見据える。 申しわけのようにおざなりに、噛み痕を舌先でなぞりながら。 「あせるな。ばかやろう。……受け止めるって言ったろう?逃げたりなんてしないから、馬鹿力で縛ったりすんな…」 詰る言葉に咎める目つき。その奥にかすかに見て取れる動揺。 のぼっていた血が一気に下がる思いがした。 強がってはいるけれど。 平気なはずがない。 陵辱に繋がる記憶を無理やりにこじあけられて。その上それをなぞるような真似をされて。 平然としていられるわけがないのだ。 自らの仕打ちの意味に気づいて呆然と固まる直江に、その心中を察したか、ふっと高耶は表情を和らげる。 「あやまったりするなよ?……大丈夫。おまえなら平気だから」 「高耶さん……」 「……その………悪かった」 ……痛かったか?と。 赤く浮き出た歯型の痕に再び唇を寄せる高耶の手首を離して、その身体ごと抱きしめる。 「ああでもしてくれなければ止まらなかった。あやうくあなたをまた傷つけるところだった……」 悔恨を滲ませる声音に高耶が微笑む。 「……バカ。謝るなっていったろう?」 傷ついたりなんかしない。おまえになら……。 念じるように高耶は呟き、泳ぐように背中を反らして自らシーツに倒れこむ。 「直江…」 そう小さく呼び、瞼を閉ざした。 心持ち唇を尖らせて、降りてくるくちづけを待つように。 自分でさえ御しきれない獣を棲まわせているような男なのに。 こんな自分を、高耶はまるごと受け止めようとしてくれている。 その彼の強さ、度量の広さに、熱いものがこみあげてきた。 見映えのいいだけの飾り太刀などと。 往年の景虎の、いったいどこをどう見誤ったらあんな誤解ができたものか。 反発していた。侮っていた。美貌や血筋や人望や……彼の持つすべてのものに嫉妬したあげく、彼の本質を見損なった。 その狭量ゆえに、一度は彼を死に追いやった。 そんな男でも。 彼が望んでくれるから。だから自分は生きていけるのだ。 彼こそが主。己のすべてをかけてもまだ足りない、唯一の存在。 傅くように恭しくその唇に触れた。 喉に、鎖骨に、舌先を滑らせた。 先ほどとは打って変わった丁重な愛撫に、高耶がくすぐったそうに身をよじる。 それでも、滾る想いに違いはないのだと、無言で知らしめるように舐るうちに、その口からは秘めやかに声が洩れだす。 「も…きつい。……脱がして」 乞われるままに、ホックを外しフロントを緩め硬い布地をずり下げてやる。 腰を浮かせてその動きを助けた高耶は、最後にはもどかしげに肢を振ってジーンズを脱ぎ捨てた。 「おまえも」 言われて、衣服を脱ぎ落す。 その様子を逸らすことなくみつめていた高耶は、身ひとつになった直江が添い臥すより先に身体を起し、下肢に手を触れて来た。 どくりと嵩を増すそれを口に含もうと顔を寄せる。 「……!」 声も出なかった。 それでも、ただ奉仕されるよりは彼をも高めてやりたくて、直江は彼の肘を取り、向きを変えるよう促す。 「……?」 互い違いに横向きに組み合うふたつ巴の位置取りは、彼にとってもたぶん初めてのことだろう。 戸惑う彼をいざなうように、目の前にある彼の分身を口腔に受け入れる。 与えたあまやかな刺激は、すぐに己のものに返されて、あとはもう、ふたりとも無我夢中だった。 猫がミルクを舐め取るようなぴちゃぴちゃとした舌遣い。 押し殺された呻き。 鼻に抜けて響く呼吸。 唾液だけではない先走りが指に絡んで捏ねまわされる、濡れて粘つく音。 切なげな表情を伺い見ることこそ出来ないけれど、耳朶をうつ淫猥な音がより欲望を深くする。 なにより互いの育ちきった象徴が、如実に共有する快楽の度合いを知らせてくる。 相手に施す口淫の技巧は木霊のようにすぐさま身の裡に戻されて、幾度も背筋を走り抜けては臨界に向けて昂ぶっていくのだから。 堪えきれずに、太腿を抱えあげ顔の上をまたがせた。 そうして露わになった窄まりを濡れた指で解していく。 すべてを曝すことになった姿勢にも気づかぬふうで、腰高に男の身体に乗り上げ顔を伏せ、高耶は直江を昂めることに夢中になっている。 感じる部分を探るたびにくぐもった喉声を上げ、緩慢になりながらもまたすぐに熱心に咥えこむ彼の一途さがたまらなかった。 頃合を見て、身体を返した。 ベッドに仰のく格好になった高耶は、むずかるように脚を直江の腰に巻きつけ一時も離れまいとする。 いなしながら、張りつめた屹立を後庭に宛がった。 二度三度とその門をノックする。窺うように見上げた視線に、彼は微かに頷いて、ため息のような深い息を吐いた。 自ら、押し入るそのタイミングを男に知らせてくるように。 じりじりと穿たれているあいだ、その瞳は閉ざされなかった。 逆しまに拓かれるこの瞬間が苦痛でないはずはないのに。 自らも望んでいるのだと、そう、みつめ返す眼差しが伝えてくる。 その潔さに圧倒されながら、 それでも、彼を苛む行為はとめられない。 せめて気持ちよくなって。 軋みあう肉の中から、蜜のような快楽をすくい取ってほしい。 それは、とても身勝手な祈りだけれど。 彼のためだけの願いは、やがて、次第に艶めくその表情で叶えられた。 ねつい大気、噎せ返るような芳香に、青草の臭いが混じる。 あの時と同じ百合の香りの中、愛しい身体は己が眼下に晒されている。 つりはしに支えられ、一点だけで繋がって為すすべなく揺すられながら。 気を飛ばし、放心したような虚ろな表情は、あのときと同じもの。 それでも。 「高耶さん……」 「ん…」 耳元に囁きかければ、とろりとした瞳に一瞬光が戻って自分を認め、幼子のように微笑み返す。 あの日、わけもなく欲し、希ったもの。 百合野での望みは、刻を経て、この夜に成就したのだった。 |
この直江のいったいどこが「気遣う直江」よ???と自問自答しつつ。百合野幻想「可憐」バージョンでした(笑)
「可憐」という表現にも語弊あるなあ(苦笑)
でも一番はじめに頭に浮んだ高耶さんはこんな感じで、これならレクイエムに続く・・・よね?と思ったんです。自分。
本編、百合野1、2.5、レクイエムと続く流れの番外終了です。
ああ、やっと宿題終わりました。某さん…(笑)ご覧になっているかしら??
「あのメールからの道のりは長かったねえ?」(←馳夫さん風)
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