ぴちゃり……ぴちゃっ…… 室内に濡れた音が響く。 高耶の脚の間、蹲った直江の口元から。 口を窄めて引きずり出したオスの先端から男の唇の端へ、つうっと唾液が糸を引く。 形のいい唇はまたすぐにソレを咥えこみ、敏感な部分を舌先で舐めあげては口腔で転がす。まるで飴玉をしゃぶるみたいに。 男の頭が動くたびに垣間見える自分の肉色、熱く滑る感触。下生えにかかる息。 もう、腰が砕けそう。恥ずかしくてたまらないのに、信じられないほど気持ちいい。 次々湧き上がる快感のその先が知りたくて、 この淫猥な光景から目を逸らせない。 高耶の思いを察したようにちらりと男が視線をあげた。視線を交わらせてにやりと笑う。 (気持ちいいんでしょう?) 高耶を見つめる鳶色の瞳がそう言っていた。 そのとたん、背筋から脳天までぞくりと眩い快楽の箭が突き抜ける。 「ああんっ!」 思わず甘ったるい声がでて、高耶が慌てて唇を噛んだ。 と、それを見上げていた直江がスパートをかける。 手慣れた男に本気で責めたてられてはひとたまりもなかった。 「あっ…あっ…あああっ!」 無意識の仕種で高耶は腰を突き上げ、直江の口に精を放っていた。 「ごちそうさまでした」 放心している高耶に、身を寄せて直江が囁く。 「とても、美味しかった……」 手と手とを絡め合わせ、シーツに高耶を縫いとめて。 「おしゃぶりされて、恥ずかしそうにしているあなたがすごく新鮮で素敵だった。 なにしろ、昨夜は薬のせいでかなり貪欲でしたからね」 言わずもがなの台詞にかあっと頬が熱くなる。思わず身を捩っても、圧し掛かった男の身体はぴくりとも動かない。 さらに顔を近づけて思わせぶりに声を潜めた。 「でも、そのせいでココがこんなになっちゃったんでしょう?辛いだけじゃなくて気持ちいいことも覚えてもらっていて、 とっても嬉しいですよ……」 そう言ってキスをする。 労わるというよりは、燻る官能をさらに煽るような、執拗なキスを。 一度は収まったはずの興奮が、また身体の奥からどくんどくんと疼きだす。 男の洗礼は性器だけではなく、高耶もそれまで知り得なかった奥処にも及んでいたのだ。 そこで教え込まれた爛れるような悦楽が、タチの悪い麻薬みたいに甦って刺激への欲望を掻き立てる。 密着している男の体温までが、昨夜の快楽をリアルになぞるようだった。 欲しい気持ちが止まらない。 熱に浮かされたようにキスに応え始めた高耶に、直江はさらに囁いた。 「昨日の今日だから、負担はかけたくないんですが……、私もどうにも収まりがつかない。 するならどっちのお口がいい?どうぞ高耶さんが選んで決めて」 さらりと残酷な二択を示してにっこり笑う。その瞳に相変わらず剣呑な光を浮かべたままで。 「…あ……」 小首傾げておとなしく待っているこの男は、身体だけでなく高耶のすべてを占有したいのだろう。 余計な矜持や躊躇いは不要。ただ諾々と快楽に溺れる抱き人形になれと言われたような気がした。 でも、それさえ、自分が望んだこと。もともと、逃げ道なんてないし、逃げる気もない。 「昨日みたいに……後ろでして」 涙で滲む目で男を見上げて訴えた。 「いいの?本当に?……昨日のローション使いましょうか?」 直江が優しい口調で確かめるのに、首を振った。 「ううん。痛くてもいいから、もうアレは使わないで……。昼間、ずっとヘンな感じで……。できればもう使ってほしくない……」 身体の変調について、初めて昼から抱えていた煩悶を打ち明ける。 直江は驚いたように目を見開いて、すぐに何か腑に落ちた貌をした。出迎えてくれた時の高耶の様子にようやく合点がいったのだ。 高耶を見下ろす瞳の色が少し和らぐ。 「辛くなったらすぐに言って?約束ですよ?」 「ん…」 頷く高耶の唇にもう一度触れてから、おもむろに、直江はその身体を裏返した。 |