「あんっ……あっ!……ああッ!」 高耶はもう意味ある言葉を発しない。 「ほら、もうすぐ。もうすぐですよ。高耶さん……」 語りかける直江の言葉も、たぶん正確には解さない。 「ほーら、全部入った。初めてのくせにいやらしいお口だ……。俺のを全部呑みこんでもまだこんなに焦れてひくひくしてる。 この調子なら存分に動けそうだ……ほらっ、こんな風に」 「ああああッ……あんっ……んんっ!!」 ただ感じるままに声をあげ、身を捩り、腰をくねらせては快楽を強請る。 「気持ちヨクってたまらないでしょう?そうなんでしょう?返事がなくたってその蕩けた貌を見たら解りますよ。 もっとシて。もっと突いてって書いてある。直江のコレでタカヤをイかせてくださいってね」 「――――ッ!」 面白いぐらいに反応を返す、 ヒトの理性が剥落し暴走する本能のまま淫靡なケモノに堕ちた姿態の、なんと美しいことだろう。 直江は、今、そんな高耶を組み敷きひとつに繋がっている。 先に何度か彼をイかせた。 彼の吐き出す白濁は、乾いた夏草の匂いと味がした。 「まさか、自分が男のコをしゃぶるハメになるとはね。でも、悪くない。 それであなたのヨがる貌が見られるなら、もう病みつきになりそうだ…… それにこっちも。指一本じゃ物足らないみたいキュウキュウしてる。もっと太いの頂戴っておねだりしてるみたい」 直江が言葉にするまでもなく、 あれほど固く引き結んでいた入り口が今は逃すまいとでもするように直江の指を食いしめている。 ゆっくりとくねらせながら引き抜けばじわりと滲みだす潤滑の蜜。食んだ異物を失って閉ざしきらずにいる窄まりから覗く、ぼってりと鮮やかな内部の緋色。 さらに潤滑を足して、高耶のソコに自分のソレを宛がった。 彼の太腿を抱え上げ、膝立ちで圧し掛かるように圧を加える。 じわじわと肉が食い込む。彼の内部に呑みこまれる。 信じがたい快感が湧きあがる。 堪えようと動きを止めれば、今度は逆に高耶の肉襞が生き物みたいに艶めかしく絡みついてくる。 ぐちゅぐちゅと濡れた音が響くのは、潤滑だけの滑りではない。きっと自分の蜜も先から溢れ出しているからだ。 手管は要らない。 彼の存在すべてが、五感を掻きたて、男を煽る。 頭の芯がくらくらする。 こんなのは反則だ。初めてのカラダなのに、ヨすぎてたまらない。 こんな危ない人を独り放っておくわけにはいかない。何処かに閉じ込めてしまわねば。 彼を見出せた幸運に酔いしれながらそんな不穏な考えまでが脳裏をよぎる。 「本当に、あなたはなんて……」 眼下の高耶を見下ろして、たまらずに身を屈めて口づけた。 挿入の角度が深くなったか、一瞬だけ彼は苦しげに眼を細めて、すぐに与えられた口づけに夢中になった。 半開きで続きを強請るのを往なして、口の端から喉へ、そして胸へと唇でなぞっていく。 つんと尖った乳首を含み、もう片方も舌と指とで転がせば、またあえかな声が上がった。 同時にきゅうと後孔が絞られる。 溢れそうな悦楽に耐えながら捏ねるように腰を使い、知ったばかりの彼の弱みを抉った。 「―――――ッッ!!」 もう、彼の悲鳴は声にさえならない。 弓なりに身体がしなって、昂ぶりきったオスの先端からとめどなく濁った蜜をとろとろ零す。 絶頂からくる漣のような締め付けを十二分に味わい、直江も続いて彼の最奥目掛けて精を放った。 荒い息を吐きながら身体を起こしたときには、高耶は気を飛ばしてしまっていた。 暫くその肢体を眺め、それからおもむろに清めに掛かる。 そして、彼の身体に刻印を標した。 胸の中心、心臓の真上と、下肢の付け根、鼠蹊のあたり。 決して余人には知れない場所に、己だけの密かな所有の証として。 きつく吸いたて血を浮かせた、鮮やかな鬱血の痕を。 鋭い痛みに高耶の瞼がびくりと震える。それでも彼が目覚めることはなかった。 「これでいい」 自ら作った赤い刻印を愛しげになぞりながら、直江が呟く。 「これであなたは私のものだ。……キレイな色を保てるようにこれから毎晩ででも付け直してあげる。可愛い高耶さん。 まずはゆっくりおやすみなさい」 優しく語り掛けるその鳶色の瞳には、狂気じみた独占欲が浮かんでいた。 |