なだらかなラインに添って胸元へと滑らせる。 掌に当たるのは彼の中の愉悦の証。 彼が感じていてくれることにこっそりほくそえんでから、つんと尖ったその乳首をゆるゆると転がした。 「……あっ、あっ!」 「気持ち、いいでしょう?」 うろたえた声を上げるのに、言い聞かせるように言葉を被せた。 「殺さないで、いっぱい感じて。そしてあなたの中の熱を、私に教えて」 身を捩ろうとするのをいなしながらさらに手を伸ばし、繁みの下に凝った彼のオスを包み取った。 血を集めるように扱き上げる。 若々しいそれは、見る間に質量を増しとろりと蜜を滴らせた。 響くのは手淫の奏でる卑猥な音。そこから気を逸らそうと深く強引に口づける。 「んっ!……んんっ」 必死に目を見開きながら、逃げを打つ。けれど、逃してやれるわけがない。 そのまま責めたてて、ほどなく、彼は絶頂を迎えた。 その様子を、逐一、見ていた。 次第に息が荒ぎ、腹筋が波打ち、背筋しならせつま先が綺麗な弧を描いて、彼が達するその瞬間まで。 放ったその後も。 整わぬ呼吸や、上下する肩や、性的紅潮に染まる肌、ぐったりと弛緩する肢体を。 やがて苦しげに顰められていた眉が解け、瞼が上げる。 そうして現れた黒曜の瞳は、快楽にか羞恥ゆえか涙をいっぱいに孕み、 この世のものとは思えぬほど艶めかしくて、同時に、ひどく稚けなくて。 茫洋と視線定まらぬその様子に、胸が軋んだ。 「直江…?」 掠れた声で彼が呼ぶ、その頬を宝物のように包み込む。 「ここから先は、あなたには少し辛いかもしれない……」 この人に嘘はつけない。どれほど取り繕おうと、彼に与えられるのはもう快楽だけではすまないから。 愚直なまでに正直に告げた男を見上げて、けれど、高耶は、微かに笑った。 「あっためてくれるんだろ?いいから全部に触れてこい。おまえの熱を……身体全部で感じるから。……早くしないと、気が変るかもしんねーぞ?」 唇が紡ぐのは、吐息まじりの悩ましげな囁きと、 まだ潤む瞳を悪戯っぽく煌めかせての甘い恫喝。 これで言いたいことはすべて言ったとばかりに目を閉じる。その身を無造作に投げ出したまま。 「……御意」 本当にこの人には敵わない。 どれほど弱ってみえようと、儚げな風情でいようと。 この人の本質は何も変わらない。この世にたった一人、唯一無二の自分の主だ。 直江はひれ伏したい思いで、今、目の前に曝される高耶の身体をうつ伏せた。 長い時間を掛けて、じっくりと彼を解した。 指で、舌で、彼の内側に触れた。 あらぬ感触に彼が慄き息詰まらせるたび、宥めるように優しい愛撫を繰り返した。 身体を繋げる瞬間にはやはりきつい思いをさせてしまったけれど、 その痛みでさえ炎の色だと、高耶は泣きながら笑っていた。 とても綺麗で鮮烈な、生命の輝きだと。 絶え絶えの息で、力いっぱい抱き縋り、腕に爪痕を刻みながら。 彼のまなうらに閃くのは、おそらく昼間見た、晩秋の色彩の数々。 どれほど季節が移ろうと、決して消せない鮮やかな彩――― |