先日、月花草さま宅に、拙作「Precious 誕生日のおくりもの」をもらっていただきました。
以下は、その続きというか前振りというか背景というか・・・。
本当は「僕が遊んであげる」の台詞を書きたいゆえのお話だったはずなのですが。
・・・・・・どんどんどんどん膨らんじゃって、差し上げものだけでは収まらず(苦笑)
結局自分ちで続けることとあいなりました。
月花草さん、こちらに続けさせていただくこと、ご了解くださってどうもありがとうございました。
Precious ―守護天使―
「ねえ、高耶さん、ひとつ訊いてもいい?」 とりとめない話をしながら表通りまでの道をふたりで歩く日が続いて、そんなある朝、ふと思いついたように直江が言った。 「ん。なあに?」
そう言いながら見上げる高耶に、もう怯えや気後れの色はない。
「……引っ越してきたばかりの頃、高耶さんは私を避けていたでしょう?どうして?
直江の問いに高耶はしまったという顔をして照れ臭そうに俯いてしまう。 「うん…少し怖かった」 やがて高耶は小さく答えた。 「直江、すごくきれいだから」 「?」
言葉の意味が繋がらなくて、直江は一瞬絶句する。 「きれい…で怖かったの?でもそれなら母さんだって同じ顔でしょ?」 釈然としないままなおも問い詰める直江に、高耶は天真な顔を向けてゆっくりと首を振った。 「おばさんはマリアさまみたいだから。でも直江は天使さまみたいで、だから、怖かった」 「天使が怖い?」 「うん。絵本で見てた大天使さま。シスターが、悪い子のところにはこの天使さまが剣を持って懲らしめにくるんだってそう言ってたから。初めて直江を見たとき、直江がそうなのかと思っちゃった……」
そう言われてようやく直江の頭にも有名な宗教画のイメージが浮ぶ。 「僕、あんまりいい子じゃなかったから……。お留守番してるって、お父さんとの約束破っておばさんちに行っちゃってたから……」
自分の姿が契約の履行を迫る天使に重なったのだと、ようやく直江は理解する。 「……高耶さんはとてもいい子です。私が保証します……。それに。お父さんからはもうお許しをもらっているでしょう?戸締りさえしておけば、好きなだけうちで遊んでいていいって。母がそう頼み込んだと聞きましたよ?」 本当にしあわせそうに高耶が笑った。 「うん!そうなんだ。迷惑かけなければ直江のおうちに遊びに行ってもいいって、お父さん言ってくれたの」 屈託のないその笑顔が直江にとっても嬉しかった。 弾む気持ちのまま、跳ねるような足取りで直江の先にたった高耶が、突然くるりと振り向いた。 「あのね、初めてこの道で直江と挨拶したとき、にっこり笑ってくれたでしょ?あれ、すごく嬉しかった。天使さまだけど、怖い天使じゃないんだって。……ごめんね。それまで隠れてたりして」
ようやく言えた謝罪の言葉。 「高耶さん……」 もう、何も言いようがなかった。目の前にいる彼こそが無垢な天使そのものだから。 万感の思いで歩くうちに、ふたりが別れる大通りが迫る。そこに友達を見つけ、高耶は直江にいってきますを言うと、軽やかに駆けだしていった。
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ほとんど同時期のエピソードだけてんこもりで、ちっとも先に進まないのですが。
とりあえずまとまったものからupしようかと(苦笑)
次回は仰木さんちの事情について春枝さんが探ってくれそうです…。