先日、月花草さま宅に、拙作「Precious 誕生日のおくりもの」をもらっていただきました。
以下は、その続きというか前振りというか背景というか・・・。
本当は「僕が遊んであげる」の台詞を書きたいゆえのお話だったはずなのですが。
・・・・・・どんどんどんどん膨らんじゃって、差し上げものだけでは収まらず(苦笑)
結局自分ちで続けることとあいなりました。
月花草さん、こちらに続けさせていただくこと、ご了解くださってどうもありがとうございました。
Precious ―こううん―
「それがねえ、まるでモノでも分けるみたいに親権を半分こしたらしいのよ。
仰木さんと別れた奥さんとで。高耶くんと生まれたばかりの妹さんとを。 結局、仰木さん、失業やらなにやらあって高耶くんを何年か施設に預けて……、就職して生活が安定したのを機に引き取ることにしたらしいわ」 お茶を淹れながら春枝が口にする、愚痴ともぼやきともつかぬ高耶に関する話を、直江は黙って聴いている。
それによれば、高耶は物心つくかつかないかのうちに、母と別れ、父にも一度は手放されて、養護施設で育ったらしい。
翌朝、それとなく探りを入れる直江に屈託なく高耶は施設の様子を話してくれた。
お姉さんみたいな先生がいて、仲間がいて、ちょっぴり怖いシスターがいて。 でも、楽しかった。みんな一緒だったから。と、少しだけ、歳に似合わぬ遠い眼をして高耶が言った。
「シスターがね、お別れするときに言ってくれたの。おめでとう、よかったねって。 口ごもるのは、その約束が守れていないせいか、あるいは夢見ていた親子の生活とはかけ離れた今の暮らしのせいだろうか。
このままではいけない。
そのために、自分は何ができるだろう?
今日も直江相手にぼやきながら、日に日に春枝のため息は深くなる。
「……こどもの気持ちにあんまり無頓着なんだもの。ご飯を食べさせて、服を着せてればそれでいいって問題じゃないのよ。 「……なんとかしてあげられませんか?せめてお父さんが帰ってくるまで、うちで預るとか。母さんが忙しいなら、放課後は僕が面倒をみてもいい。……だからお願いします」
それこそお人形さんのように黙って話を聞くだけだった息子から突然こんな反応を返されて、春枝が目を丸くする。 「あの子を……、高耶くんを寂しいままでいさせたくないんです」
その真剣な表情に、次第に春枝も真顔になった。 「……そうよね。なんとかしてあげたいわよね。よしっ!母さんに任せなさいっ!」
次第に気迫のこもる言葉は、もういつもの太っ腹な母の口調で、幾らも間を置かず、直談判へと出向いたのだった。
こんな時、春枝の楚々としたはかなげな容貌は強力な武器になる。 そんな経緯を後から聞き、殿方の扱いなんてちょろいもんよと、と口元を手で隠し上品に笑う母に、女の逞しさを垣間見た気のする直江である。
父親に引き取られたこと。 |