先日、月花草さま宅に、拙作「Precious 誕生日のおくりもの」をもらっていただきました。
以下は、その続きというか前振りというか背景というか・・・。
本当は「僕が遊んであげる」の台詞を書きたいゆえのお話だったはずなのですが。
・・・・・・どんどんどんどん膨らんじゃって、差し上げものだけでは収まらず(苦笑)
結局自分ちで続けることとあいなりました。
月花草さん、こちらに続けさせていただくこと、ご了解くださってどうもありがとうございました。
Precious ―笑顔の功罪 2―
魂を何処かに置き忘れてきたような子どもだった。 歳が離れて授かった末の息子は、柔らかな薄茶の髪や整った目鼻立ちでまさしくお人形のように可愛らしかったけれど、その、人形のように感情をあらわさない硝子の瞳や起伏に乏しい表情が、育てる側を不安にさせた。
長じるにしたがってそれは顕著になっていった。
そのまま、座敷にこもること半日あまり。
封じの名前を与えたと、僧は告げた。
それでもいいと、春枝は応えた。 そう言って、薄衣ごと我が子を抱きしめる彼女に、老僧は微笑みながらさらに続けた。
封じの名は、いつか護りの名に転じる。
その言葉に嘘はなく、やがて昏睡から目覚めた子どもは「義明」であることを受け入れ、家族を受け入れ、少しずつ世界と和解していった。
それでも息子は人並みに大きくなり、手をかける必要も無くなってほっと胸を撫で下ろした頃、春枝は思いがけないものの口からその名を聞いた。
「直江」と。
彼は、ずっと待っていたのだ。高耶だけを。
端から見れば、息子が小さな彼を庇護しているように見えるだろう。
愛しいと思う。大切に育みたいと思う。 そう、春枝は思うのだった。
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果たしてここに挿入していいパーツなのかどうか、正直自分でも迷いますが。
普通の人のはずなのに、高耶さんだけが直江と呼ぶことに誰も異議を唱えない、その理由をどこかで書いておきたかったのです。
茶の間に残された春枝さんの回想シーンということで。さらりと流してやってください(拝み)