先日、月花草さま宅に、拙作「Precious 誕生日のおくりもの」をもらっていただきました。
以下は、その続きというか前振りというか背景というか・・・。
本当は「僕が遊んであげる」の台詞を書きたいゆえのお話だったはずなのですが。
・・・・・・どんどんどんどん膨らんじゃって、差し上げものだけでは収まらず(苦笑)
結局自分ちで続けることとあいなりました。
月花草さん、こちらに続けさせていただくこと、ご了解くださってどうもありがとうございました。
Precious ―笑顔の功罪 3―
最近、高耶の態度がよそよそしい。 そんな心の鬱屈を、直江は抱えている。
いつもの朝の道を、途中までは変わりなく話もするし、手も繋いで歩いてくれる。 習慣のようになっていた、別れる際の残心も本人に拒絶されてしまった。 『バイバイしたら、直江もすぐに駅に行ってね?僕なら、もう、ずっと見てなくても大丈夫だから』
ある日、高耶はきっぱりとこう直江に告げて、行ってきますと言うと、そのまま後も見ずに、少し離れたところで待つ友達の所へ駆けて行ってしまった。
自分以上に大切な友達が出来たのだろうか。
しばらく前から、高耶と大通りで待ち合わせする友達。
その頃は、まだほっとする思いの方が大きかった。
自分が係わることで、少しでも高耶の力になれたら。
いつのまにか、自分の中での比重が大きく変わっていることに直江は愕然とする。 学校の友達に嫉妬してしまうほど、彼の成長を喜べないほど自分は情けない人間だったのだろうか。 しかも高耶は同世代の異性でもなんでもない。まだ出逢って数ヶ月の、ちいさな男の子だというのに。 打ち消そうとすればするほど、澱のようにもやもやは溜まっていく。
自分でも持て余すほどの生々しい感情を敏感に高耶は感じ取るのだろう。 互いが互いの心を読めきれぬまま、ぎくしゃくしたとした日々が続いていた。
「欠席の連絡いれるわね」 と、言ってドアを閉めてしまった。
ほっとして枕もとの時計を見る。 薬と水差しとを持って、再び春枝がくるまでに、ずいぶんと間があったように思う。 「仰木さんちにも伝えてきたわ。高耶くんを待たせちゃったら申し訳ないから」
さりげなく告げる春枝に、直江も、黙って肯くことしかできなかった。
やはり、見透かされているのかもしれない。
普段と違う、時間の流れ。 |
限りなくサボりに近い病欠で休みをもぎ取って布団から見上げる昼間の天井。
ぽつねんと取り残されるこの感じが、私はわりかし好きでした。ああ、不健康…(苦笑)