花喰い
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「ああああっっ―――!いいっ、――いいッ!」
直江の腹に跨った高耶が狂ったように声をあげる。腰をくねらせ、頭を打ち振り、しとどに汗を飛び散らせて。
これほどの甘美を、他に知らない。
精気を啜るために男を受け入れる―――食餌にすぎないと思っていた行為から、こんな芳醇な悦楽が溢れでてこようとは。
与えてくれるのが直江だから。
自分を怖れずひたむきな思慕を寄せてくる男との交合は、自らも知らなかった極みへと高耶を押し上げる。
もっと欲しい。この男が。
これが「愛しい」という感情なら、まだ足りない。もっともっと、この感情ごと喰らい尽くしたい。
「もっと、もっとだっ!もっと――奥までっ!直江っっ!」
串刺しに貫かれていながら命ずる声が、悲鳴のよう。
従う男もまた相手を斟酌する余裕はなかった。
初めて知る彼の内部は熱くて柔らかくて生き物みたいに絡みついてきて―――抜き差しのたび、箭のような快感が脳髄を駆け巡る。
たまらない。
光の箭は見る間に本数を増やし、膨れあがる欲望が出口を求めて暴れだす。
眉根を絞り、奥歯を喰いしめ、狙い済まして己が楔を突き上げる。衝撃に逃げる身体を許さず、華奢な腰骨を両手にがっしり鷲掴んで、幾度も、幾度も。
もう少し。あと、少し。
達したいという本能だけに支配されて、ひたすらに腰を振る。
頂までは、あと、ちょっと。

―――そしてついに臨界が来た。
瘧のように細かく身を震わせながら直江の放った白濁を、高耶は喉のけ反らせて受け入れた。
身の裡に熱いものが爆ぜて溢れる高揚と充足は、やがて終わりを告げるようにとろとろと伝い落ちる淫猥な感覚に取って代わる。
外へと滲みだすその滴を惜しむみたいに、きゅっと内股が引き締まった。

その締め付けに、直江が呻いた。
まだ息は整わない。荒く息を吐き互いに激しく胸を波打たせながらも、見上げる琥珀の眸と見下ろす黒耀の瞳、二つの視線が絡み合う。

「おまえのコレは、最高に美味い……」
自ら身体を倒し男の耳朶に唇を這わせながら、うっとりと高耶が呟く。満足しきっていない、余燼の燻る声音だった。
「あなたも………なんて……」
上擦る声で直江も返す。まだ足りないと、暗に匂わせた口調で。
互いの貌に浮かぶのは密やかな共犯の笑み。

そうして、口づけを交わし、指を絡ませ、掌を滑らせて未だ触れていない部分を暴きあう。
交婚する蛇のようにぬらりと湿った感覚がまざりあい、どこまでが自分でどこからが彼なのか、もう判然としなくなるまで。繰り返し。







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