にえの花守 7




覚悟のほどを量るかのような、執拗な前戯だった。 直江は、裸に剥いた高耶の身体のひとつひとつを丹念に確かめていく。
未成の骨格。薄い肉付き。なだらかな下腹。
その下の淡い叢。緩く勃ち上がりかけた、若々しい雄の象徴。
確かに少年でありながら、時に少女めいたあやうい陰影をつくる、伸びやかな肢体。

奪うような勢いで口腔を貪った後は、短く鋭い口づけを幾つも落とした。
仰け反る喉に、鎖骨に、心臓の上に。
きつく吸いたてて花びらのような刻印を散らす。

そのたびにあがる短い悲鳴に愉悦の色が混じるのにたいした時間はかからなかった。
刺すような痛みや痺れるような疼痛でさえ快楽と感じ取れるように、この身体は慣らされているのだ。 あの濃密な酒の味わいそのままに。

感嘆の思いと同時に、それと同じだけの嫉妬が心のうちに湧きあがる。 鬱屈した思いが手荒い愛撫に拍車をかけた。
ことさらに強く胸のしこりを吸い上げて、高耶に甲高い嬌声をあげさせる。
身をよじって逃げ出そうとするのを押さえつけ、痛々しいほどに赤く腫れたそこを宥めるように舌を這わせた。
唾液に濡れ、ぷっくりと立ち上がった突起を、今度は押し潰すように掌で転がす。
「あああっ!」
撃たれたような悲鳴。すぐにそれは忙しない喘ぎに変わった。

急激に昂められた疼きに耐えかねたか、高耶の手が自らを慰めようと下肢に伸びる。
それを捉えて、首を振った。
「…っな!」
どうして?と顔をくしゃくしゃにさせ、涙目で訴えてくるその表情がたまらない。

視線を絡ませたまま身体をずらして思わせぶりに柔毛を梳き、彼の屹立を口に含む。
彼にとってはおそらく初めての経験。その衝撃に身体の跳ねるのがわかった。
たちまちに張りつめ、今にも弾けそうなのを塞き止め、悶える姿をしばし堪能してから、戒めを解く。
促すように扱いてやれば、たちまちに迸る白い飛沫。

真珠のようなその雫を花芯に抱いて、花が震えた。高耶の陥る陶酔に、花も同調しているのだ。 放たれる気と精を浴びて、赤い花びらはさらにその色艶を増していく。

真紅の花を褥にして、しどけなく横たわる裸身の花守。総毛だつほどに淫靡な眺めだった。

その身体にゆっくりと覆い被さる。
先程よりはよほど優しい口づけを彼に与えた。
高耶はそれを陶然と受け入れる。応えるように舌が絡み、両の腕が男神の頚に巻きついた。
もっと欲しい、深く欲しいと無言のうちに伝えてくる、扇情的な仕種。幼さの残る顔立ちに、妖艶な娼婦の手管。

「いけない子だ。そんな誘い方、いったい誰に教わったの?……ああ、此処には蛇がいましたっけ。 アレが?あなたをこんなふうに仕込んだのは?」

キスを解いて囁きかければ、その間も惜しむように追いかけてくる。
唇を啄み、舐め上げて、それでも動かない男に焦れたのか、高耶の方から舌を差し入れ貪り始めた。 くぐもった喉声で鳴きながら続きを強請って下腹を擦りつけてくる。まったく眩暈がしそうだった。

「ここは?此処にも路はつけられている?」
そう言って、内腿に手をかけ静かに割り裂いた。

眼下に晒された後庭の、固く閉ざした窄まりに触れる。緩やかにそよぐ指先の感触に高耶がひくんと身を揺らした。
では、彼は、確かに受け入れる快楽も知っているのだ。

「ねえ、高耶さん、答えて。この中にも蛇は潜りこんだの?」
「…ん……っあ…」
吐息まじりの微かな頷き。それが少しばかり勘に障って詰るように問い詰めた。
「蛇の何処を受け入れたんです?頭?それとも尻尾?こんなに小さい入り口なのに、よくも入ったものだ」
「ちが……」
ぐいっと無遠慮に指を押し入れられそうになって、高耶の声が裏返った。
「じゃあ、なに?」
「…へび…のした………」
「ああ、舌が。あれは細くてしなやかで、この口にはちょうどいい。そのうえなかなかに強靱だから、 初めからずいぶんと楽しめたでしょう?……蜜吸鳥みたいに出入りさせて、何処まで舐めてもらったの? ……このへん?それとももっと奥まで?」

指を一本、そろそろと含ませる。
きつい入り口さえくぐってしまえば、内部は驚くほどに潤っていた。滑りに助けられて探り当てたしこりのあたりを擦ってやる。

「――――っ!」
声もなく、背中が弓なりにしなった。

「此処だけをこんなふうに弄られたの?この奥はまだ?」
がくがくと頷くから、褒美とばかりに深く衝いてやった。

ひっと、高耶の喉が鳴り、足指が反る。
勃ちあがった雄の先端からは、リズムに合わせてとろとろと精液が溢れ出した。

それだけではなく、指を咥えた窄まりもまた、じわりと蜜をにじませている。
花が両性を持つのなら、花の気で保たれたこの身体も然り。本然の性が猛るのと同時に、本来なら濡れないはずの器官が 男を迎えるためにじくじくと熟れてくる。まるで無花果の果実のように。

「……本当に淫らな身体だ」
うっとりと直江は呟く。
そして、続けさまの放出に弛緩しきっている高耶の中に、己が男根を押し入れた。





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……誰よ?十行で終わらせたいって喚いていたの(苦笑)
結局一週間かかってカタチにしたのは、このシーンの高耶さんは、
他のやおいには絶対使いまわし出来ないだろうなと思ったもので……(^_^;)
次回でまとめます。ギリギリだなあ…(遠い目)




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背景イラスト/小菅さま