花の香りの中、花に見下ろされながら抱かれてる――そんな幻想がひどく高耶を昂ぶらせた。 すでに体内にはアルコールが巡っている。 ほんのり色づいた裸体を惜し気もなく曝し自分から身体を開く真似さえして、高耶は直江を求めていく。 「んんっ……いい…そこ……」 与えられる快感に高耶が素直に声を上げる。 背中に回し、まるで受けた愛撫をなぞるように直江の肌を滑る手指。意趣返しのように、時折立てられる爪。感極まって仕掛けられる、噛み付くようなキス。 そのひとつひとつに応えてやりながら、直江はただ優しいだけの睦言を高耶の耳に吹き込んでいた。 その言葉に蕩けながら、すこしだけ不思議に思った。 いつもなら揶揄のひとつも降りてくる。いつも以上に乱れている自覚はあったからなおさらだ。そして、羞恥をかきたてる煽り文句も自分は覚悟していたのに。 だが、意識はいつまでもそこに留まっていられなかった。 またひとつ、弱いところを突かれて、高耶が甲高く嬌声をあげる。 腰のうねりが止まらなくなる。苦痛と紙一重のきわどい歓喜。藁をも掴むように直江の首に縋りつく。 感じすぎてすすり泣きながら、たったひとつ、男の名前だけを呼びつづけて。 嵐の後の静けさ。 羊水の海に漂うような浮遊。 身体の奥処の痙攣が収まり、白く弾けた視界に徐々に色彩が戻るまでの余韻を心ゆくまで噛み締めて、高耶は呼吸を整えようと深く息を吐いた。 傍らにただ密着している体温に安堵する。 高耶が絶頂に陥っていた間、直江はそれを邪魔することなしに辛抱強く波の引くのを待っていてくれたらしかった。 「なおえ」 それが嬉しくて腕を絡めた。 「…気持ちよかった?」 「……ん…」 甘えるように顔を埋める。 その仕草に目を細めながら、口の端に歪んだ笑みが浮ぶ。獲物はすでに手中に堕ちたのだと。 「じゃあ、もっと気持ちいいことしてあげる」 「―――っ!」 言葉とともに落ちてきた強烈な刺激に、高耶の喉が引きつった。 やすりを押し当てられ一気に引かれたような痛痒。焼け付くような何かが、敏感になった内腿から鼠径部、わき腹を通って胸の突起にまで一気に這い上がっていく。 「ああ、やはり乾いたままでは、キツすぎますか…。大丈夫。大事なところへはあなたの白いのでちゃんと濡らして柔らかくしてあげるから」 「な・なに?」 怯えたような高耶の視線に緩く直江が微笑んだ。 指に巻きつけていたそれを高耶にみせつけるように広げてみせる。 「これ?あなたの好きなあの花の包片ですよ。寒さから花芽を守るために暖かそうな鱗毛に覆われているんです。 ほら、見て。艶やかでまるで天然の天鵞絨みたいでしょう?でも、やっぱり布地の天鵞絨よりは毛足がごわつくようですね。 なぞった痕がこんなに赤くなってしまって…。力を加減しなくては……」 「直江……」 「冬が終わってお役御免になったこれにもう一度役に立ってもらおうと思って。あなたという大輪の花を咲かせるために。ね、もう一度咲き狂ってみせて…。さっき以上に」 「やっ……」 反射的な抵抗は予期していたように容易く封じられた。 両手首を戒められ、毛皮のような花被で軽く唇を撫でられる。その刺激に肌がざわついた。 「どう…?次は、これ……あなたの味ですよ」 一度離れた指が、こんどは下腹のぬめりを掬い取って戻ってくる。 青臭い臭いと、日に晒された干草の匂い。 湿っていくらか柔らかくなったその花被片は、さっき以上に皮膚に密着し、摩擦の密度を上げたようだった。 知らず震えが走った。 直江がそれをどこに施すつもりか、わかってしまったから。 嫌悪と同時に期待している自分がいた。火の点いた身体が新手の刺激を嬉々として欲しがっていた。 まだ湿り気の残る薄皮だけの先端。そこを伺うようにタッピングされて、抑えきれない声が洩れる。 ほとんど無音で刻まれていたリズムに、やがて粘液質の音が加わった。 「あなたの花芯からは蜜が溢れ出してきましたね。……では、こちらはどうでしょう?」 淡々とした声音で告げられて全身が羞恥の色に燃え上がる。 物欲しげにひくつくそこを、きっと男は冷静に観察してる。そう思うだけで息が上がる。 やがて。 獣のざらつく舌に舐啜されるかのような、あり得ないはずの刺激を内壁の奥深くに受けて、高耶が絶叫した。 |