「いいの……?」 今さらな莫迦げた問いかけに、顔をシーツに押し付けたまま、彼は小さく頷いた。 「直江の……思うようにして……」 くぐもった声がした。 いつだって彼の潔さに打ちのめされるのは自分のほうだ。 ひれ伏したい思いで、うつ伏せた彼の背中に手を添えた。 微かな震えが走る身体を宥めるように掌を滑らせて、 たどり着いたのはひきしまった双丘の間。静かに肉を押し広げれば、眼下に曝されるのは情交の余韻を残し泣き腫らしたように赤らむ窄まり。 先程まで自分たちは此処でひとつに繋がっていた。今度は此処から自分以外の異物をはじめて彼に孕ませるのだ。 その愛戯に彼はいったいどんなふうに応えてくれるのだろう? 思うだけでぞくぞくした。 「……怖いことは何もないから……」 陳腐な台詞を囁いて湿した珠を彼に宛がう。 「……ただ、感じて」 くっと指先に力を込める。すでに一度柔らかく綻んでいた肉襞は、容易く小さな珠を受け入れた。 「……離れている間、あなたのことだけ考えてた。この珠があなたの中でどんな音色を奏でるのか、聴きたくてたまらなかった……」 ゆっくりと指の長さまで沈めて、静かに指だけを引き抜いて。いじらしく収縮する襞の様子をうっとりと直江は見つめる。 残るひとつも同じようにして埋めこむと、珠同士が中でかちりと触れ合った瞬間に彼が慄くのが解った。 「あなたも。どうか声は殺さないで、どんな風か私に教えて?」 さすがにこの厚かましい願いに返事はなかったけれど。 どんな些細な変化も見逃すまいと、息潜めるようにして直江は高耶を見守った。 それはまるで蛹の羽化を見るようだった。 最初の兆しはあえかな吐息。 こっそりと、直江は口端をつり上げる。 彼の体内で珠が蠕動を始めたのだ。 緬鈴は人肌と湿りを帯びて自ら震えるという幻の玉石。それを模して作られたのであろうこの秘具もまた内部に封じられた水銀と舌によって温められればひとりでに震えだす。 もちろんそれはとても微かな動きだけれど。 何も知らない彼には予想外のことだろう。 ましてや含ませた珠はふたつ。互いに共鳴し喘鳴しあって振動はより複雑になる。 「……ああっ」 堪えきれぬような声が洩れた。 珠が留まっているのはちょうど指の深さ。其処は彼の感じる部分でもある。 その証拠に彼のオスは勃ちあがっているけれど、すでに絶頂を極め、 本来なら一番きつく欲しがる場所に緩慢で無機質な刺激ばかりが続いたら、彼はいったいどうなってしまうのだろう? 達せないもどかしさに根をあげるか、我を忘れて強請るだろうか―――? 背徳めいた小昏い期待と悦びが漣のように背筋を駆け上がった。 逸る心を押さえつけ、直江はなおも高耶を見つめる。小さく蹲ったまま、耐えるようにきつく布地を握り締める彼を。 |