一度は極めたタイミングにも係わらず、彼の未通の後庭は、指という異物さえ容易に受け入れようとしなかった。 しろよ。と彼は言い、 気遣い無用、払ったモトを取ってくれと、不遜に見つめてきたけれど。 蕩けた身体が一瞬にして痛みに竦みあがり戦慄く様子を目にしては、とてもそのまま続ける気はなれない。 「血を見るのは苦手でね」 冗談めかして彼と体を入れ替えた。 「下のお口はまたにして、まずはこっちでシてもらいましょうか……此処だってオトコを咥えるのは初めてなんでしょう? いろいろじっくり教えてあげる。だから、俺を愉しませて」 と、思わせぶりにその唇を撫であげる。 同意の印か、やがて彼はおずおずとその指を舐め、視線を伏せて、従順なペットのように下腹部に顔を寄せた。 眼下に彼の黒髪が揺れる。 脚の間に小さくなって蹲り、彼は自分を買った男の陽物に奉仕している。 唇で、舌で、或いは口腔、時には喉奥まで。収まりきれない部分は指を絡めて扱き上げ、やわやわと双玉を転がして。 手順は教えた。もちろん彼に玄人女のような巧みさはない。 けれど、拙いながら真剣に口淫を施す彼の一途さは伝わってきて、それが直江の感覚を鋭敏にさせた。 「ああ、とてもいい……。お上手ですよ。高耶さん」 そう言ってあやすように頭を撫でる。と、扱くピッチが上がった。己の嵩がまたぐんっと増すのが解る。 「……たまらない。ぞくぞくする」 掠れた声で訴えた。 「もっと深く喉を使って。アソコみたいに口を窄めて、俺のを出し入れして。……そう、もっと早く。そう、その調子」 股間に伏せられた彼の頭が激しく揺れる。指示に忠実であろうと懸命になっている。 でも元々が無理な姿勢を強いているのだ。力任せの荒業はそんなに長くは続かない。 「……疲れたら休んでもいいんですよ。先っぽだけ弄ったり…ね」 言うのとほとんど同時に、彼は、口からずるりと怒張したモノを引き抜いた。 てらてらと唾液に塗れびくびくと脈打つオスは、我が身の一部分ながら、ひどく卑猥に映った。 喉奥を塞がれて、たぶん、彼は息が滞ってしまったのだ。大きく肩を上下させて荒く呼吸を継ぎながら、 すぐさま両手で押し戴くようにして先端を浅く含み直し、くちゅくちゅ舌を使い出す。 まるで一度中断したことを詫びるみたいな熱心さで。 本当に、たまらない。 「高耶さん……」 仰のかせようと、頤に手を掛ける。 振り払おうと抗う仕種はきっと反射的なもの。すぐに彼は立場を思い出し、されるままにその貌を晒したけれど。 「そのまま続けて。俺のを美味しそうにしゃぶるとこ、俺にもちゃんと見せて」 それこそが、彼が避けたいことだったかもしれない。 彼の顔に見る見る血が上り、泣き出しそうに歪んだから。 それでも彼は従うしかないのだ。 他人のオスを咥える様子を逐一観察されながら、彼は、再び、それを昂める行為に没頭しだした。 頤から膨らんだ頬、そして耳朶。項の辺りへ。 彼の邪魔をしない程度に彼の肌に触れ、彼の髪をかき混ぜる。 気持ちがいいと、彼によって昂められていることを彼に伝えるために。 こんなに健気に性器を舐られているのだ。感じないわけがない。 ―――もしかしたら彼も? 上気した頬、潤んだ瞳。顰められた眉。そしてもどかしげに揺れる彼自身の腰――― オトコに奉仕しながら、ひょっとして彼自身も感じているんじゃないだろうか? 気になりだしたら、確かめずにはいられなくなった。 「―――動きますよ」 言うなり、彼の頭をがっしりと捉まえた。 彼任せでなく今度は自分の意思で動く。彼の口腔を使う。道具のように。 元々滾っていたものは、すぐに出口を求めて荒れ狂う。 腰を突き上げ、二度、三度と彼の口に放った。 最後の一滴まで搾り出すように扱いてから、一言、 「飲んで」 と命じた。 一拍おいて彼の喉がごくりと動く。 それを見定めてから、おもむろに、彼の身体を両腕で引き上げた。 「っ?!」 彼には不意打ちだっただろう。 おかげで、はっきりと見えた。カタチを変え、勃ちあがり始めた彼自身が。 「ああ、俺のをしながら、高耶さんも感じてくれていたんですね。うれしいです。 今度は一緒にイきましょうか」 有無を言わさず向かい合わせに抱き上げて二つのオスを彼に握らせさらにその手を包み込む。 彼の掌ごと激しく上下に擦り上げる。 すでに濡れそぼっていたモノはすぐに粘つき淫靡な水音を立てぐんぐん育ち始めた。 「……あっ……あっっ……っ!」 彼の眼が大きく見開かれる。 二度目の射精で共に放たれた精液が、二人の下腹を汚し、交わりあってとろとろと流れ落ちていった。 |