恋情
-7-




「そうそう。コレの扱い方がまだでしたね。中身はこんな感じです……」
愛撫の手をいったん休めて避妊具の封を切る直江の指先を高耶が不安げに見つめている。
「本来なら育ちきったところであなたの坊やに被せるものですけど。どうです?装着してみます?」
これ以上オモチャにされるのはたまらないと思ったのだろう、高耶は怯んだように首を振ったけれど、 直江は、そんな彼の反応も織り込み済みだった。わざとらしく溜め息をついてきかせる。
「そう?残念。ちなみに伸ばすとこうなりますよ。広げる時は爪を立てたりしないように。破かないよう気をつけてね」
片手で摘んでいたものを、直江は手慣れた様子で反対側の指に嵌めだした。 滴りそうなほど潤滑をまぶされた薄いゴムの皮膜が見る間に男の指を覆っていのは、ひどく卑猥な眺めだった。
「どうです?指だとかなり細いですけど、だいたいの感じは掴めるでしょう?」
言いながら、くいくいと屈伸させている。 ぬめぬめと濡れ光る蛍光ピンクに変じた指がなにか別の生き物のように蠢いている。
先ほど見せられたときと同じ。 逸らしたいのにどうしても視線が外せない。

「さて、と」
食い入るような眼差しの高耶に、直江はついに牙をむいた。
「せっかく装着したものをすぐはずすのももったいない。いい機会だから高耶さんの一番イイトコロ、私が探してあげますよ」
そうして素早く脚を捉えると高々と抱え上げ、露わにした窄まりにその指を押し入れた。
同時に高耶の絶叫が響き渡った。

固く窄んではいても本来モノを通す管である器官だ。相手に与える苦痛に頓着しなければ、指一本分の異物の挿入は簡単だった。
力任せに穿たれ肺腑を残らず搾り出すような悲鳴を上げた高耶は、焦点の合わぬ眼を虚空に彷徨わせ衝撃に身体を強張らせたまま手負いの獣のように短く浅い呼吸を繰り返している。
普段、あれほど凛とした彼が、自分の視線の下、他ならぬ自分の仕打ちに頼りなく哀れを誘う姿でいる―――それだけでおそろしいほど気が昂ぶった。
彼のためにどれほど心乱されたか、本音の透ける些細な言葉にどれほど傷ついたか、自分の感じ続けた痛みの万分の一でも思い知ればいい――― 抑圧の反動が、己の行為を正当化してくれる。
ひゅっと喉が鳴って高耶が息を詰めたのにもかまわず、根元まで含ませた指で無遠慮に彼の内部をまさぐった。
皮膜越しに感じる彼の熱、うねる肉襞。 潤いの乏しい中、無理に探ればまるで抗議するみたいにきゅうきゅう絡みついてくる。その締めつけに舌を巻いた。
「処女もかくやのきつさですね。高耶さんに体験してもらえないのが残念ですよ」
「ばっ、か……野郎っ!このっ、変態!」
こんな時でも気の強さは一品だ。
涙を滲ませ痛みを堪えながら睨み上げる双眸。罵声を紡ぐ花の口唇。
そんな威嚇で今さら動じるわけがないのに。
このひとは、本当に―――そのきかん気が火に油を注ぐ結果を招くことにまだ気づいてないのだろうか?
笑みを湛えて直江が言う。
「ずいぶんな言われようですね。せっかくあなたに天国を見せようとしているのに」
一瞬押し黙る高耶に覆い被さり。とびきり優しく。
「ほら、おいきなさい」
「―――っ!」
快感点を強く抉られ、高耶が瞬時に昇天した。
ほの白い精液を振り撒き、びくびく身体をしならせて。身の裡に直江の指を咥えたままで。

しばらく気を飛ばしてしまった彼を見ていた。
はだけたシャツから覗く薄紅の尖りや、支えをなくしてがくりと仰け反った頭、露わになった喉元のラインを。
視線を真下に転じれば、剥き出しになった下肢、黒々とした繁みと下腹に点々と散るとろりとした飛沫。
射精と同時に痙攣した内部の蠕動を心ゆくまで味わってから、そろそろと指を引き抜きにかかる。 主が失神していても締め付けは相当のもので、もともとかなり余裕のあった避妊具は中の指を抜いた後も半分以上も彼の体内に留まった。

そうして身を起こしてから改めて見る高耶の肢体は、眩暈がするほどの妖しさだった。
眩しいほどに白い臀裂につつましく控えるくすんだ色の後孔。そこから覗くピンクの内臓めいてぬれぬれと光る薄い人工膜。
それは、まるで彼という美しい苗床が育んだ淫らな妖花の骸のようにも見えて。
淫蕩な眺めに目を奪われ、直江はごくりと唾を飲む。

意識のない半裸の彼をこのままにはしておけない。寝室で休ませるのは自然のことだ。
そう自分に言い聞かせて、そっと高耶を抱き上げる。
その振動に彼はわずかにうめいたけれど、目覚める様子はなかった。 それどころか、頭が傾いた拍子に薄く開いた唇が更なる続きをねだっているよう。
猛る気持ちを抑えかね、直江は乱暴にドアを開け放ち寝室へ向う。

もしも彼がベッドに横たえた後も意識を取り戻さなかったら。
このまま男を誘う花のようなしどけない格好をシーツの上で無防備に曝すだけだとしたら。
それはきっと自分同様彼も望むことなのだと詭弁を弄し、身勝手な賭けを一人決めして。





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・・・やっぱり直江はまわってナンボ
そして。
書いても書いてもやおいページが終らないのはなんでだろう・・・?



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