同じ場面を繰り返し、夢に見た気がする。 ベッドの上あられもない姿で組み敷かれ泣き叫ぶ彼と、その彼を強引に犯す自分とを。 罪悪感はなかった。 激痛と衝撃に息を吹き返した高耶が、怒号を発しあらん限りの抵抗をみせても。 暫しそうしてもがき続けどう足掻いても逃れられないと悟ったときの、怒りに満ちた貌に絶望の色が混じりだす、 その表情の変化を逐一眼に映していても。 何より大事な彼がこうして身を裂かれる苦痛と恐怖に慄いているというのに、まるで分厚いガラスの壁に隔てられてたよう、なんの痛痒も感じない。 だって、幾度も夢に見たのだ。この光景を。 最初泣いて嫌がっていた彼がやがておとなしくなり、あまい吐息を洩らし最後には自分から腰を揺らしてすり寄ってくるのを。 彼は自分のもの。自分だけのもの。 それを彼にも知らしめるのは、今をおいて他にない。 身体中に力が漲り夢そのままの万能感が唆す。思うさま彼を貪れ、と。 ろくな愛撫も施さず潤滑の助けを借りて押し入った彼の内部は、 指で感じた以上に熱くてきつくて柔らかくて。 直に伝わる熱に我を忘れ、己の快楽だけを求めて一心に腰を振った。 熱に浮かされた余裕のないセックスだった。 こちらの高揚とうらはら、次第に彼の頬が色をなくし、 人形のように揺さぶられるだけになってもまだ、彼を慮ることはしなかった。 愛していると、うわ言めいて繰り返し一方的に気持ちを押し付けながら、一向に応えない彼に焦れ、無理やりに手荒い愛撫を加え、もう一度、いかせた。 彼が精を放つ瞬間の艶姿を目の当たりにしながら、己もまた彼の内に迸らせた。 二度三度と胴震いをしつつ、さらに奥深くへと注ぎ込む。そうしてゆっくりと彼の脚を下ろしきつく腰骨を掴んでいた手を離した。 「高耶さん……」 射精の余韻かまだ固く目を瞑りしどけなく横たわる彼に呼びかけた。ようやく我が物とした愛しい人に。めくるめく法悦を与えてくれた感謝といたわりをこめて。 彼は、微笑んでくれるはず、だった。 受け入れてくれたのだ。夢の中では、いつも。 けれど。 拘束が解けたとたんに、高耶は今までの無気力が嘘のような素早さで身を翻し直江の下から抜け出すと、脱兎の勢いで寝室を飛び出していった。 床に落したシャツだけを鷲掴んで。その身に何も帯びぬまま。 直江を一顧だにすることなく。 狂躁が見る間に醒めていく。 これは願望の見せる夢などではなく、紛れもない現実。 そして彼はこれ以上ないほど雄弁に直江を拒絶したのだ。 取り返しのつかないことをした――― たった今まで彼とまぐわっていたベッドのシーツには、精液のほかに掠れたような赤い染みができていた。 高耶に働いた暴虐ぶりにようやく思い至り、直江は、呆然とその汚れを凝視めていた。 |