繋がりを解いたとたんぐったりと横たわる彼の姿に、度が過ぎたかと後悔した。 幾度となく放った自分の精液が、ぼってりと腫上がった窄まりから溢れて肌を伝っていく。 その淫靡な光景から眼を離せないでいると、やがて、とろりとした白濁と一緒に、彼は、小さな珠を産み落とした。 ブロンズ色に鈍く輝く球体。 これが音の正体かと彼の足の間に転がるそれを呆然と眺める。 そのとき、ひめやかなノックの音がして、我に返った。 とっさに長着を掛け彼の裸体を隠したのと、しずしずと扉が開くのが同時。 夜中だというのに数刻前同様一部の隙ない身ごなしの家令は、性臭がこもり何があったか瞭然の室内の様子にも動じるでなく、 捧げ持ってきた夜食の盆を小卓に置いた。 夜伽の職責が果たされたどうかの見届け役でもあるのだろう、 床に横たわる高耶と投げ出されたままの琵琶に無機質な一瞥をくれる。 「御目障りでしたらこの者は下がらせますが」 中身を飲み干して用済みになった酒盃でも下げるような物言いだった。反射的に応えを返した。 「いや、かまわない。それより湯を浴びたいのだが」 「すぐに支度いたします」 そうして入れ替わりに用意された湯で高耶を清め、寝台へと運んだ。 眼を閉ざした彼は大人びた伶人でもなく妖艶な娼婦でもなく、ごく普通の少年の顔をして眠っていた。 傍らに添い健やかな寝息を確かめ髪を梳き上げてやりながら、柄にもない真似をしていると、ふと自嘲が洩れた。 家令の態度は正しい。 この少年は先方の思惑で宛がわれた一夜限りの敵娼。モノ同然の歓待要員だ。 へたに執着を見せれば、付け入られる隙になる。鷹揚に頷いて『任せる』と一言告げればそれで自分の立場は賢く守れたのに。 それでも、気を失った全裸の彼を人の手に委ねるのは、抵抗があった。嫌だったのだ。どうしても。 その感情が彼に惹かれ始めている故なのか、或いは手酷く扱ってしまった後ろめたさからなのか―――今はまだ判じかねているとしても。 そもそも自分にまだそんな感情が残っていたのが不思議なほどだけれど、とりあえず、清潔な匂いのする人肌が傍にあるのは心地いい。 まさしくこれも夜伽としての立派な役目だろうと開き直って、直江もまた眠りに落ちていった。 この事態に仰天したのは、翌朝直江の隣で目覚めた高耶だった。 彼の身にしてみれば、許しなく主人用の寝台で眠りこけるなどあってはならないことなのだろう。 とんでもない不調法をしてしまったと身を縮めるさまがまた年相応に見えて、直江は微笑を深くする。 「私の無聊を慰めてくださるんでしょう?だったら、いろいろ話し相手になってください。朝も、昼も。……夜だけじゃなしにね」 「!!!」 笑いを含んだ言葉に、真っ赤になって絶句する、そんな彼がまた微笑ましかった。 |